来年もね

雨欲りて茗荷咲きけり摘みにけり

白い花を見つけるまで気づかない。

鬱蒼とした茗荷の藪は蚊の巣窟で足が遠のくものであるが、さすがに花が咲けば摘まなければと思う。
毎日少しずつ咲くのではなく、一斉に咲く。あっという間に両手で足らぬほどの量になるので、毎年茗荷の酢漬けになるのだが、いったん採るとしばらく顔を出さない。また三週間ほどすると同じ量だけ採れるのでこれも酢漬け、あるいは薬味として重宝している。
今年は二回採ったあと雨がまったく降らず、ときどきのぞくのだが日陰が好きな茗荷はさすがにぐったりしてもう花は咲かないかもしれない。
それにしても今年は毎日のように昼は冷素麺、蕎麦など冷たいものばかり食べているので、紫蘇と茗荷には大変お世話になった。また来年もよろしくね。

幽霊花

白昼に色失ひひぬ花茗荷

歳時記によっては「茗荷の花」と「花茗荷」は全く別の植物だそうである。

わがホトトギス歳時記では秋の季語として同一のものとされているのでそれによった。
茗荷自体が半日陰を好み、そのうす暗い足もとにいわゆる茗荷が顔を出すわけであるが、これは「茗荷の子」で夏の季語。地面から顔を出してそこから幽霊花のような色味のない花をつけるのが初秋の頃である。
一日花ということだが、花を天につきだしたように咲き誇っているのを見たことがない。きっと朝早く咲いてはお日様が上がるとともに萎れてしまうのではなかろうか。
まるで喇叭煙管のような花がうなだれているのしか見たことがない。花の色、形ともちょうど芒の根本に咲く南蛮煙管とそっくりである。色素をもたないので薄クリーム色のような、幽霊のような雰囲気をもった花である。であるから、これは虫を呼ぶような花ではなさそうである。根茎で増えるので受粉の必要もないはずなのだが、考えてみれば何のために咲くのか、よく分からなくなった。

薬味

地味ながら柿の木蔭の花茗荷

雨が続いていたので忘れていたのだが。

久しぶりに水やりしていて発見したのが白い茗荷の花。これはいけないとまさぐってみると出てくる出てくる茗荷の子。
まだまだ冷素麺の季節がつづくので薬味に大変重宝する。

甘酢がうまい

窮屈な鉢にのぞける花茗荷

ちょっと気がつかないうちに、いくつも花が咲いている。

花になる前の茗荷の子もどっさり。
プラの鉢がはちきれそうに株が増えて、今年は大豊作だ。
両手に余る花茗荷、茗荷の子を摘んでもどると家人は甘酢に漬けて食べるという。
胡瓜と並んで、茗荷の甘酢がさっぱりして食が進む。
と言っても、昼は素麺が多いのだが。
そういう意味では、食はまだまだ夏のものだ。