当て

葉の落ちて大層な柿の顕れり

毎年立派な柿を生らせる家がある。

年に何回か植木屋が入って手を入れているのだが、今年はおおきく茂った葉ばかりのようで、やはり干魃に近かった夏の暑さで実の入りが悪かったように見えた。
ところが、黄落が始まるとまもなくそれまで隠れていたいつもの立派な実が生っているではないか。
裏年とみえて去年の半分くらいの数しかなさそうだが、大きさでは決して引けをとらない。
老夫婦が協力し、昔ながらの先が二つに割れた竹竿を操りながら大きな籠に入れてゆく光景がまもなく見られるだろう。あれだけの数があると全部はとても取り切れそうもないが、何杯もの籠がいっぱいになるほどであるのは送る当てはあるのだろう。

イタチごっこ

ブロワーに落葉の右往左往かな
ブロワーに追はれ落葉の相寄りぬ

第五回目のワクチン日。

みなさんコロナ馴れしたせいだろうか会場には長い列もできず、受付からスムーズに運んであっという間に経過観察の15分も過ぎた。
自宅から10分ほどの距離なので歩いても行けるが、万一のことが頭にあって車で行くこととした。当然ここも空いていて拍子抜けすることとなった。
会場の公民館、町民ホールが付属する体育館施設ががらんと広くみえる接種者が少なく、スタッフの姿だけが異常に多いというのが第一回目、第二回目の頃とくらべて全くちがうところである。
BA4、5型対応ということだが、この冬はまたその変異体の何たら型であるらしく、ワクチンと変異のイタチごっこのようなものである。弱毒化しているようでもあり当初ほど怖れる必要はないようなので、いつまでこんなことをしているのかとは思うが、やはりもしものことが頭にあるので今回も受けることにしたのだが、さて。
会場の周囲は春の桜が見事だが、桜紅葉も終盤にさしかかって道路やアプローチにはしきりに落葉が降る。インフルも本番のようである。

ずた襤褸

スニーカー裏に落葉のつきしまま

急に引っかかった。

靴底のつま先部分が剥がれそうになったのである。
安物の靴だけど足にあった履きやすいもので、裏が剥がれるのはこれが二度目である。
履き擦れてすっかり薄くなったけれど、なんとか接着剤で貼り合わせたい。気に入ったものは襤褸になっても捨てられない性分は変わらない。だましだましまた使うのである。

10月の陽気

きのふにはなかりし暈の落葉かな

一日で一気に積もった。

昨日までは道の端に積もっていただけの落葉が、今日は道を隠すほど散り積もっている。
毎日が冬に向かってどんどん突き進んでいることを実感する。
今日の歩数1万ちょっと。
陽気がいいので気持ちよく伸ばせた。

雑木いろいろ

新しき落葉のはなつ匂ひやな
枝ぐるみ落葉を敷けるくぬぎかな

木の周りの広い範囲に落葉が積もっている。

なかには枝ごと落ちて、どれもまだ新しい落葉。誰も踏んだ跡がないところに踏み入れば、そこは「新しく」落ちた葉っぱたちの匂いがたちこめて、これもちょっとした森林浴だなあと思う。
欅の大木も広い範囲に落葉を散らしているが、葉の大きさ、厚さ、固さなどにおいて櫟のほうがまさっているのでボリューム感があって、いつの間にか落ち葉のふとんを踏むのを楽しんでいた。
今日あたりは楢の木の黄葉が目立ってきれいになってきたと思った。雑木にもいろいろあって、みな美しい。

ケーキの道

犬四手の黄色塗せる落葉道

林の一画が明るい。

犬四手の薄い葉が黄葉して光りをよく通すし、幹の周りに散り敷いた落葉がまた明るい黄色で、そこだけ地面から浮き上がるように存在を教えている。
茶色がかった他の雑木の落ち葉に振りかかるようにして散った黄色は、まるでチョコレートケーキにマロンの欠片をまぶしたようにも見えてくる。遠目にもモンブランケーキのようで、そんなことを考えながら散歩していると様々な色した楓の敷く道は何と言うケーキに似ているだろうかと考えるのだが、なかなか思いつかないのだった。

土質改良

園丁のブロー吹き寄す落葉かな
腐葉土に半ばなりたる落葉かな

落ち葉の季節。

広い公園にはシルバーセンターから派遣された人たちが、落葉をかき寄せている。狭いところは熊手で、広いところはエンジンを回して風をおこし吹き寄せるわけだ。
このあと回収の軽トラが回ってきて、バックヤードに運ばれていき、腐葉土や堆肥のもとになるのだ。
腐葉土は櫟の葉がいい。薄いが量も多くて質のいい腐葉土が期待できる。
川越のサツマイモが有名だが、長い年月をかけて櫟の森から作った腐葉土、堆肥をほどこして水持ち、栄養保ちの悪い関東ローム層の土を改良した土に負うところが大きいと聞く。