立秋を告ぐ

虫の声呼ばんと窓を放ちけり

この朝キリギリスが窓のすぐ下まで来てくれた。

思わず窓まですり寄って耳を澄ます。
大きくくっきりとした声だ。
猫たちには姿が見えるのかしきりに一点を見つめている。

いつもは隣の空き地や、庭の草むらなどで鳴いているのが、どうしたことか今朝に限ってすぐそばまで来てくれたようだ。立秋だよと告げに来てくれたのかもしれない。

声色

新しき声色聞こゆ今日の虫

毎晩涼しげな声が聞こえてくる窓辺。

今日はいつもと違うゆったりしたリズムの声も加わって、昼間はともかく夜にはいよいよ秋なんだなあという思いを強くする毎日だ。

流星群

今日しかと虫の声聞く窓辺かな

今日の夕はひさしぶりに涼しい北風が吹いて、昼間の暑さを忘れさせてくれた。ドアを開けた途端熱気に包まれた昨夜とは雲泥の差だ。虫たちもよほど気持ちいいのだろう。お隣の空き地からなんとも涼やかな声が響いてくる。

今晩は10時頃月が沈むので、「何とか流星群」の観察には適しているそうな。奈良の空とて結構明るくてなかなか星月夜とはいかないのだが。

静寂な夜

この窓に ありていつもの 虫の声

書斎の窓際にデスクを並べているので窓を開けていると虫の声がよく聞こえる。

夏はクーラーなどを使うときがあるので、窓を開けている時間は秋の方がはるかに長い。在宅治療の親がいるので外出もままならず机にしがみついていることも多いのでよけいにそう思う。病状はといえばターミナルケアのまだまだ序の口に過ぎず、やがて昼夜となく睡眠不足の日がくるのだろう。

開けはなった窓から聞こえてくる虫の声は何事にもまさる慰めのような気がする。

涼しい声

雑草の原も風雅や虫鳴けば

裏の区画は雑草が茂り虫たちの天国となっている。

この夏は一度も草刈りをしてないとみえ雑草が伸び放題で我が庭にも浸食しそうな勢いだが、虫たちの声を毎日聞いているとこよなく愛おしい者たちに思え、このまま草刈りしないでもいいではないかと思ったりもする。
夜にすだく虫の音を聞くのもいいが、まだ暑さが残る昼間かすかに小さな声が風に乗ってくるのを聞くのはいくらか涼しく感じ救われたような気分になれていいものだ。