闇の妖精

蛍の闇に背筋を走るもの

漆黒の闇というのはぞっとするものがある。

蛍というのは、街灯もないところにこそ舞うものなので、よく見ようと懐中電灯を消すとそれこそ闇なのである。まして、雨の時期だから月もなくて真っ暗闇になることは多い。
最初のうちは夢中で蛍をカメラに納めようと楽しんでいても、やがて周りを見る余裕ができると、あらためて恐ろしい場所にいるのだと思い知る。そうなると、もういてもたってもいられなくなって、蛍狩りはお仕舞いになるのだ。
本来、蛍は人里にちかいところに棲息するものだが、最近は里の近くは蛍が生きられない環境が多くなった。だから、人里離れた闇の中はまるで異界のようにも思えてくるのだ。

螢川

蛍川寄り来て靴の泥まみれ

梅雨に入ると蛍の季節。

雨で農作業が出来ない日は、麦わらで蛍籠を編む地方が今もあるという。
この籠は底抜けなので、蛍を楽しんだらすぐ逃がすことができる仕組みだ。
麦わらでできているので、微妙に不揃いな編み目から洩れる蛍火はランプシェードのようにほんわりと灯るにちがいない。

護岸コンクリートの川には蛍は生息できない。