散るはさだめの

蜘蛛の子の目鼻手足のおぼつかな
蜘蛛の子の孵るや散るのさだめかな
蜘蛛の子の散るは人間踏めぬ道

蟻よりはるかに小さい。

ごま粒ほど小さいという言葉があるが、人の目から見れば粒にもならない、まさに点でしかない存在。うっかり指を置けばつぶれてしまいかねない儚い存在である。
そのコンマ何ミリかという小さな紅い点々がブロックの上など、注意してみなければ気づかないところを集団となって移動している。
袋から孵ったらまづはどこかへ行かなければならないとばかり、いっせいに動くのだ。いったいどこへ行こうというのか。

慣用句

蜘蛛の子の散りてしのちのとどこほる

庭の片付けをしていたら、巣を破ったばかりとみえる蜘蛛の子がうやうやといる。

大きさ一ミリにも満たない小さくて赤い子供たちがコンテナーの上を右往左往しているのだ。おそらくコンテナーの上に登ってきたのはいいが、行き場を失ってしまったにちがいない。
「蜘蛛の子を散らす」という慣用句があるが、あれは巣の袋を破って生まれた直後のことを言うらしい。今日は袋を破って出てきたところを見たわけではないが、あの塊や個体の小ささから巣を出てそう遠くないころだったんだろう。

今日見た蜘蛛の子のうち、果たして何匹が生き残れるんだろうか。

小さな命

芝刈るや蜘蛛の子さっとちりぢりに

伸び放題の芝生。

暑さが幾分落ち着いたところで、しばらくぶりに鋏を入れてみた。気がついたんだけど、芝生って想像以上に小さな虫たちの隠れ家なんだよね。だから、それらを餌としてるんだろうね、雨蛙が飛び出すわ、コオロギの仲間がいたり、生まれて間もない蜘蛛の子たちが慌ててちりぢりに散るわでびっくり。
蜘蛛の子は夏の季語なんだけど、あの子たちがこれから天敵から身を守りながら必死に生きてゆくんだろうなと思うと妙に親近感を覚えたよ。