去るとみて遁術つかふ蜥蜴かな
かくれんぼ遊びをしているようだった。
遁術の名人は角を曲がって逃げたかと思ったが、そっと覗いてみるとこちらを伺う目と目があった。
そのまましばらく睨めっこ。こちらが動けば敵も逃げる構えのようだ。
ただ、その目には警戒心を感じるものの、恐怖感はなさそうなあどけなさが見える。
人間と適当な距離をおくことを生まれながらに知っているようで、無碍に殺生もなるまい。
爬虫類は好きではないが、小さな蜥蜴ならばそれほどの嫌悪感は起きない。むしろかわいいとさえ思えるのが不思議である。