棟と棟

金輪際鳴かずばならず蝉七日

はやくも鵙の高鳴きを聞いた。

今日は大暑というのに。
そう言えば実質梅雨明けしたばかりだが、当分は35度を超える日はなさそうである。今日の空気は湿度50%台。軽やかで涼しい風である。まるで昔のお盆の頃の朝のようであった。
ただ、蝉はクマゼミ全盛期の世界で、朝のしばらくは棟と棟で響き合ってそのやかましいことこのうえない。夕方に庭の胡瓜になにげなく近づいたら大きなクマゼミが眼前をかすめていって驚かせた。どうやら庭先のあちこちで夜を過ごしているらしい。この分では次世代も庭に産み落としてゆくのだろう。
アブラゼミを身近に見なくなって久しい。

隔世

蝉鳴いてまた一日の始まれり

8時頃になると律儀に鳴き始める。

明らかにクマゼミの声である。
もう最近はクマゼミしかやってこなくなった。庭に卵を産み落とすのがきっと彼らだけになってしまったのだろう。昔なら身近なところで羽化するのはたいていがアブラゼミであったのに比べ隔世の感がある。
まだ盛期ではないとみえて長くは鳴かないが、そのうちこの戻り梅雨が明けたら窓も開けていられないほどやかましい季節が来るはずである。

苦行

ちかごろの蝉は大きな声で鳴く

歳のせいだろうか。

蝉の声が煩くてならない。
暑さもあるのだろうが、耳があの波長に合わなくなってきたのではないかと思えてくる。
夫婦の会話すら聞こえなくなるようなトーンにはほんとうにイライラさせられるのだ。
とは言え窓を閉めればエアコン必定となるし、しばらくは朝の苦行が続きそうである。

初蝉

遠蝉を女教へる朝餉かな

蝉が遠くで聞こえた。

八幡さんの杜からだろう。耳をすませば、初蝉とは思えぬほどシンシン響いてくる。
蝉の風が思ったより涼しくて、もしかしたら今日が秋の初めなんではないかと思うほどだが、熱さの本番はこれからだろう。
とっくに鳴き始めていたんだろうが、連日の熱さで窓を閉めてエアコンを回していることが多いし、気づかなかっただけにちがいない。たまたま日曜日で往来の車が少ないこともあって、聞こえたというわけだ。

実際のところ、わが家では男が気づき女に教えてやったのだが。

何か為せと

蝉の朝忙し忙しと言ひ募る

鶯に代わって蝉がよく鳴くようになった。

それも、朝早くから「ワシワシ」と鳴くのは関西ならではのクマゼミであろうか。
もっとも、今では首都圏に進出して西特有のものとは限らなくなったかもしれないが。
雑用しながら聞くともなく聞いてると、あの騒がしい声はいかにも追い立てるようであり、時間がない、時間がないとばかり身に迫ってくるようにも聞こえる。
それでなくても朝からすでに充分に暑く、今日は特別さらに暑くなるぞと教えてくれるようでもある。

蝉の不作年?

叢入りて蝉の恋路の邪魔となる

草むらにうっかり足を踏み入れたところ、まさに行為中の蝉を驚かせてしまったらしい。
ジッと一声鳴いて目前を飛び去ってしまった。
いつになく蝉の声が遅い年だが、気づかないところで生物たちの営みは続いているようだ。