驚く

驚くや若きかまきり距離を跳ぶ

足もとから青い蟷螂がジャンプした。

驚かせてしまったようだ。大きさからするとまだ成長途中らしいと思われる。子供ではないがおとなでもない大きさ。人間でいえばティーン世代というべきか。これまでに大きくなるには庭の畑の害虫も益虫も食ってくれたんだろうか。
いっぽうの市民菜園ではおびただしい蛙の子。うっかりすると踏んでしまいかねないくらい。行くところゆくところぴょんぴょんと飛び跳ね逃げる。これらの数の蛙を養うだけの虫がいるのかと驚くのはこちらである。

兵法者

蟷螂の雨に遁げ出す草の蔭
蟷螂の退くときは退く兵法者

どうやらかまきりは水が嫌いらしい。

散水の水が苦手のようだし、突然の雨にもファイティングポーズとるどころか、一目散に草蔭に逃げ込もうとする慌てぶりは滑稽ですらある。
けだし、三十六計逃げるにしかずを地でゆく兵法者であろう。

隙見せず

十分に肥えて蟷螂枯れそむる
枯れし眼の瞳もの追ひいぼむしり
蟷螂のアームかくかくロボットに

身の丈四寸。大きい。

身じろぎもせず警戒している。
隙あらば逃げだそうと機会を狙っているのか。
突き出したボールペンに対して、的確に焦点を当てているような顔の動きである。
どことなく、蟷螂というのはロボットの動きに似ていて、ジーコジーコと関節を中心に動いては静止するみたいで、無駄な動きは一つもないように思える。
これも、獲物を確実にしとめたり、危険からすばやく逃れる術なのかもしれない。

庭仕舞

冬蟷螂斧振る意志のなかりけり

庭の冬備えをした。

霜にやられないように観葉植物などを取り込むのだが、これが歳とともに意外に大変になってきた。なにしろ直径30センチに相当する10号鉢などは土の重さだけでも相当な重量である。これを何個も庭から室内に持ち込むのである。さらに、子猫にいたずらされそうなものは2階に待避させなくてはならない。

2時間ほどかかっておおかた終わると、今度は庭の後片付けが待っている。蘭の日覆いのネットを外そうとしたら、そこにカマキリの卵が産みつけられていて、主と思われるカマキリがにょっきり顔を出してきた。おなかの辺りがずんぐり丸く太っているのでおそらく雌なんだろうが、寒さのせいかいかにも鈍重な動きで、指をさしだすともそもそと乗ってきた。
なんだかカマキリに悪いことをしたような気がして、そのまま茂みにそっと放してやった。