庭の守人

子蟷螂ほほに降る風のいたずら

生後2〜3週間くらいだろうか。

頬に草の葉でも触れたような気がして、肩に手をやるとそれは蟷螂の子だった。体長2センチほど。生まれたては1センチあるかないかぐらいなので冒頭の推量も大きくは外れていまい。
手にとるとじっとこちらをにらみ返してくる。
着地を失敗したくせに、人を恫喝するとはたいした度胸である。
今年も庭の守人として悪い虫をやっつけてくれるだろう。

ファイティングポーズ

子蟷螂太々しさの片鱗も
子蟷螂葉かげに退路もとめけり
逐われては逃げるにしかず子蟷螂
蟷螂の子も欲しげなる迷彩服
蟷螂の子のもの陰に安んずる
糸ほどの斧とて武器に子蟷螂
糸細工ごたる五体も子蟷螂
攻防の両の構へも子蟷螂
ファイティングポーズしてみせ子蟷螂
正対の構へ隙なく子蟷螂
蟷螂の子また群るるをよしとせず

カマキリは生まれたらすぐ一目散に散って物陰に姿を消すそうである。

残念ながら卵から孵ったところは見たことはないが、どうやら蜘蛛の子とちがって生まれるのにもいくらか時間差がありそうだし、生まれても当たり一面をうろついている蜘蛛の子とは違うようである。だから一斉に逃げ散るさまを言うのには、「かまきりの子を散らすように」と言ったほうがより的確で正しい表現なのかもしれない。

葉隠れの蟷螂の子

もう6月に入ったので生まれてからは幾分時間がたっていると思われる。だから、先日発見したのは当然ながら親から自立して独りの力で生きてきた子なのである。見つかってしまった時は「しまった」とでも言うように紫陽花の葉陰に逃げ込んで様子をうかがっているかのようだ。なおもレンズを向けてみると、身を固くするようにしてファイティングポーズをとるのであった。
あの糸のような頼りない鎌が、本当に役に立つのかどうか実際のところは分からないが、立派に生き延びているところをみればそれなりに役割を果たしているのだろう。