尽きない

丈ほどに猫の爪研ぐ障子かな

気がつくとまた爪痕が増えている。

どれも背伸びした高さに四筋の跡がくっきりと。
畳に座ると目の高がちょうど破れているわけで、張り替えてもすぐに破られるイタチごっこなので、とうとう張り替えの頻度も落ちてゆく。
今の猫どもは子猫時代壁紙を相手に爪研ぎする癖にほとほと手を焼いたが、秋に来た子はやたら紐の類いをかじる癖があってその防御に躍起である。
猫を飼っているかぎり、この悩みは尽きない。

和らぎ空間

半刻の障子明りをこよなくも

狭いながら純和風に作ってもらった部屋があった。

隣家と接した東南向きの部屋であり、南にも家があったので、とくに冬などは日の差す時間は短いものである。
だが、日が当たると障子に閉ざされた空間はすぐに暖まり、しばらくは猫のブラッシングなどして緩い時間が流れる、至福のときとなる。
いまの家でも猫たちは和室が好きである。日がさんさんと降り注ぐ日などは、炬燵にもはいらず翳る時間がくるまでその場所で過ごしている。
ひともまた、畳に寝転がって猫の目線で庭を眺めているのである。板張りや絨毯でもない、畳の間というのは掃除しやすく、いつも乾燥していて、それでいてどこか暖かく清潔で安心して寝転がっていられる空間なのである。

御所見学

楝の実あふぎ始まる御所ツアー
蔀戸をあげて御所貼てふ障子
水曲げて落葉ただよふ御庭かな
実南天ここが小御所の鬼門らし

源氏物語完読旅行2日目は京都御所から始まった。

職員の案内で約1時間の見学だが、印象としては御所暮らしというのは意外に質素なものだったようだ。天皇のお住まいだといって金ぴかに飾り立てるどころか、逆にかつてお住まいだった清涼殿などは調度も質素に地味に設えられ、冬を越すにはいかにも厳しそうだ。東京遷都まで実際に住まいとして使われた建物などは、外は寝殿造り風でも内部は書院造り風で畳も敷かれてはいるものの、民の上流階級並の家と変わらないほどだ。
象徴的なのは障子で「御所貼り」という独特の貼り方だ。これは大きな紙は貴重だったので、小さな障子紙を何枚も貼りつなげる方法でその継ぎ目模様が大変ゆかしく美しい。