雀隠れ

すずめのてつぱうまたはげんげの飛鳥かな
紫雲英田のきぎす隠れの飛鳥かな

久しぶりに飛鳥散策。

いつもの公園が駐車待ちするほどの大混雑で、飛鳥の晩春もいいかと足を伸ばしたのである。
まずは飛鳥寺の桜吹雪に打たれ、万葉文化館周辺を散策。
田の半分くらいはレンゲが咲き乱れ、もしくは雀の鉄砲が風に靡いている。
甲高いというか、やや低めだったか野太い雉子の雄の一声に振り向くと、すっぽり隠れるくらいに高く伸びた紫雲英田にちらちら動くものがおる。雀隠れと言うよりは雉子隠れと言ってもよさそうだ。
見渡しても田に出ている村人は一人もなく、飛鳥の田が動き出すのはまだしばらく先と見ゆる。その間は雉子君も安心して逍遥を愉しむことができるというわけだ。

雉走る

立姿佳き裸木に囀れる

ここんところ囀りを聞くようになった。

今日の主は櫟の大木のホオジロ君。
最初はこの木に啼いていると分かっていてもなかなか発見できなかった。何人かが木を見上げるようにして通り過ぎてゆくが、そのなかのご夫婦があそこだと教えてくれて、ようやく枝でうまくカムフラージュされてるのを見つけることができた。
特別史跡「巣山古墳」の濠でも、鳴き交わすようなカイツブリの番。

今日は久しぶりに多くの鳥たちが顔を見せてくれて愉しい半日だった。
なかでも、10メートルほどの距離をおいて菜畑から赤い鶏冠が出て、やがておそるおそる出てきた雉の目と目が合ったときの彼の緊張ぶりがおかしかった。「雉も啼かずば撃たれまいに」ではないが、人家に近い田や畑をぶらり散歩していて危険な目に合わない方がおかしく、人が来ても飛び去るでなく、用水路に隠れたり菜畑に逃げ込んだり、その何となく不器用な生き方に声援したくなった。

粗鋤の田を蹴り雉子のひた走る

棲み分け

眠りたる里田の畦の雉子かな

「きぎす」、雉である。

探鳥会ではるか先の畦を悠然と雉が歩いているのを発見。
一段高い道路を隔てて倉庫めいた建物があり、人がいるというのに実にのんびりとしたものだ。
しばらく畦を逍遥するかのようにゆっくり移動していたが、やがて藪の中へ姿を消した。
古墳公園の林と里山の境界のような場所での発見である。
雉もまた人間のすぐ近くで棲息する生きものである。