晩春の平群谷

農帽の婆紫雲英田に何しやる

平群谷はいよいよ春闌けて、暮の春の趣を濃くしている。

放棄田も目立つが、なかには一面紫雲英の絨毯を敷いたような田もあって、車からも目が奪われそうになる。
つと目にとめたシーンに、紫雲英の田にうずくまっている農婦があった。
子供は一人として見なかったが、農婆は紫雲英を摘んで花輪にするわけでもないだろうし、いったい何をしていたのだろうか、答が得られないまま今も気になって仕方がない。

雀隠れ

すずめのてつぱうまたはげんげの飛鳥かな
紫雲英田のきぎす隠れの飛鳥かな

久しぶりに飛鳥散策。

いつもの公園が駐車待ちするほどの大混雑で、飛鳥の晩春もいいかと足を伸ばしたのである。
まずは飛鳥寺の桜吹雪に打たれ、万葉文化館周辺を散策。
田の半分くらいはレンゲが咲き乱れ、もしくは雀の鉄砲が風に靡いている。
甲高いというか、やや低めだったか野太い雉子の雄の一声に振り向くと、すっぽり隠れるくらいに高く伸びた紫雲英田にちらちら動くものがおる。雀隠れと言うよりは雉子隠れと言ってもよさそうだ。
見渡しても田に出ている村人は一人もなく、飛鳥の田が動き出すのはまだしばらく先と見ゆる。その間は雉子君も安心して逍遥を愉しむことができるというわけだ。

水無田

紫雲英田の闌けて矮種の犬ばかり

パッチワークのような紫雲英田が目を引く。

ここは、田植えが遅い当分水を張ることもない地域で、紫雲英の丈もずいぶん伸びてしまっている。
最近は子供も遊ばないし、せいぜいが散歩の犬を放つくらいだろう。
その犬だって、小型犬ばやりで、遊ばせようにも足に絡みつきそうで、走り回るには不自由なほどだ。
鋤込むまでには当分間がありそうなので、まだまだこの景色は楽しめそうだ。

冬物しまう?

げんげ田に犬や幼なの声まろぶ

春耕にはまだ早い大和盆地である。

雑草も目立ってきたが、一部は紫雲英田として散歩の人も歩みをとめて眺めている。
リードを解かれた犬は嬉々として田に遊び、幼子も紫雲英に足を取られながらも走り回ってる。

明日の朝は冷え込んで遅霜注意報が出ているが、そのあとは暖かい日が続くそうだ。
もう冬物はクリーニングに出してもいいかもしれない。