末期の水

吸呑に命ふくませ寒の水

箱の名前を確かめたら「薬のませ器」とある。

何ともイケテない名だなと思ったので、ウェブをうろついたら「薬吞器」−>「吸呑」とヒットして、やはりいい名がついてたじゃないかと合点がいった。「すいのみ」は日本人の感性にはいちばんしっくりくる音。
動けない病人に薬の水を飲ませるには便利な例の器である。
母は秋に逝ったのであるが、食べ物も水も受け付けなくなった最期はこの吸呑で本人の気の済むまで水をふくませたものだ。
寒の水は混じりけなく体にいいと聞く。あの末期の水が寒の頃のものであったらもう少しは生きられたろうか。ふとそんな思いがよぎったのである。

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