句材探訪

尾根小屋の風に氷柱のあらぬ向き
尾根渡る風に馴れにし氷柱かな
尾根小屋を閉めて氷柱に見送らる

NHK/BSの「新日本風土記」はよくできた番組で録画をとっては時間のあるときに見ている。

だから、ときには二ヶ月も前の番組を見たりもするが、特別季節に連動しているわけではないので気にはならない。というのも、毎回長い時間をかけて制作した番組だからだとも言える。NHKならばこその製作姿勢であり、受信料を払う価値は十分にある。このような良心的な番組がほかにもいっぱいあるのがNHKの魅力で、今後もいい番組を送り続けてくれることを期待している。

掲句は南アルプス地方の厳しい暮らしを追った番組をみて詠んでみたものだが、農鳥小屋の主人がシーズンを終えて里に降りる日、小屋のつららが尾根に巻き上げる風によってあちこちあらぬ方向に向いているシーンが映し出されたときの様子だ。海岸の松が長年の強い海風によって一方に傾く「磯馴松(そなれまつ)」のようで、加えて吹き上げる風にめくりあげられているムーブメントも加わったアートと言っていい形とも言えた。

吟行に行かずとも句材はあらゆるところにある。

“句材探訪” への2件の返信

  1. 「新日本風土記」、良心的でいい番組ですねぇ。逆に視聴率一辺倒で引っ張りに引っ張る良心のかけらもない番組、時間の無駄と敬遠させてもらっています。

    日本は小国ながら風土が千差万別でどこに行っても人の生き様は絵になるのでしょうね。氷柱と書いてつららと読む。大和ことばですねぇ。海岸の松の傾くの「礒馴松(そなれまつ)」と言うんですか。なるほど。小松空港から金沢市への北陸道でよく見ました。

    1. いやあ、お恥ずかしい。誤字がありました。
      誤)礒馴松
      正)磯馴松
      「そなれの松」と読んだ方がわかりやすいですね。「いそなれ」と読む人がいますが、これはどうかと思います。いつも同一方向に吹く風の強いところで見かけます。そちらでは足を伸ばして大洗海岸あたりが典型でしょうか。

      NHKでは「新日本紀行 ふたたび」というのが忘れられた頃放映されるようです。これも名番組で、見終わっていつもほっこりした気持ちに包まれます。こうした番組はいつまでも続いてほしいものです。

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