お見舞いありがとう

ひつぢ穂の列ぞ棚田の見目形

稲刈りしていくらもたたないのに刈田が穭田に変わっている。

穭穂の列はそのまま田植えどきの仕上げにかかっているが、一糸乱れずに真っ直ぐ伸びる田もあれば、ふらふらとあちこち揺れる田もあって、主の技量というか、性格というかが見てとれて、いろいろ想像をふくらます遊びも楽しい。
棚田などを見ると、形状に沿った列がたくまずして美しいものがあり、これは高いところから眺めてみるのも面白く飽きないものがある。

今日は思いがけず渓山さんのお見舞いを受け、おまけに勢州津の名物まで頂戴した。
津は鰻の店の多さでは全国でも筆頭クラスで、それぞれの店にそれぞれの固定客、ファンがいて、ふだん食べ慣れているものとはひと味違うのがいい。夕食にさっそくありがたくいただくことにした。

試し掘り

スコップのうながす藷の赤さかな

リハビリを兼ねた藷の試し堀。

藷の太りの充実期の夏の暑さと水不足のせいだろうが、生育はあまりよくない。
藷は痩せた土に育ち、一度植えたらほとんど手のかからない親孝行な作物であるが、さすがにあの暑さは堪えたのだろう。それにいくら乾燥に強いとはいえふた月も雨が降らなくては植物として体を維持することもままならないはずだ。
今は、しゃがみこんだ作業の継続や、そこから立ち上げるのがやっとの体力なので一苦労であるが何度か繰り返しているうちにだんだんと体力も戻ってくることを期待している。
藷のありそうなところめがけてスコップを刺していくのだが、そのとき藷を傷つけてしまうこともよくあって慎重にポイントを探る必要がある。最近分かったことだが、たいていは方向を決めて斜め差ししており、根のはえない苗の先端あたりには藷ができないので、そこを目指して刺すのが無難のようである。
三十センチほど地中に剣先を突き立て、梃子の要領で根こそぎ持ち上げるとあざやかな赤い色が浮かび上がった。

インスパイア

稲架の穂の奥にのぞけるあをさかな
曇天に黄を放ちたる粟立草
葛咲いて泡だつ花とせめぎあふ

散歩の歩を菜園まで伸ばした。

帰りは少しの上り坂とあってきついものがあったが、休み休みしながらいつもなら十二、三分のところを倍かけてようやく家にたどりつけた。
しかしながら、久しぶりに目に飛びこむ景は新鮮なものがある。ふだんは見逃しているかもしれないものにも心が動かされる。
今日の処は「色」であろうか。
日の恵み、風の恵みを受けて熟成が進んできた稲架の色合いにも近づいてよく見ると、奥のほうにはわずかな緑が残っている。かと思えば、曇天にかかわらずというか曇天のなせる業か、背高粟立草の黄色の鮮やかなこと。思わず目をこらしてしまうのだった。
荒れ地での葛と粟立ち草の縄張り争いも見ものだった。さて、どちらが征するか。

秋の声

デジタル波ふまへて鵙のアンテナに

秋の声を聞いた。

雨にもかかわらず、隣家のテレビアンテナに鵙がやってきてテリトリー宣言をしているようだ。

見たまま

病窓をはすにさばしる秋の蝶

病床とはいっても病院に比べれば自宅のほうが自然にふれられる度合いが多い。

それだけ季題に巡り会うチャンスがふえるので、みたままをすぐよむ詠むようにしている。