冬タイヤ

花冷の雨のしみこむ傘の骨

雪のところもあれば真夏日のところも。

列島の北は震えて桜どころではないかもしれない。金子兜太の
人体冷えて東北白い花盛り
を思い起こすような天気だ。
当地は雪にこそならないが朝から冷たい雨。鉢物を外へ出した直後だから、連中には悪いことをしてしまったようで申し訳ないことだ。
冬タイヤはもう少し履いていようと思う。

鯉の季節

大石を鯉の慕ひて水温む

野にあれば乗っ込みの季節。

庭の池にあればそうもいくまい。岩の陰で叶わぬ恋を嘆くのみか。

仏生会

金銅の杓の細きに甘茶仏

法隆寺の甘茶仏は伽藍の大きさにくらべてほんとに小さい。

花籠に埋もれてしまうくらい小さいのである。
そのせいか甘茶をそそぐ杓も金銅でこれくらいないと言うくらい小さい。柄も細くて、甘茶をすくうにはていねいな扱いが必要になる。
杓が小さいので一回分の量とてしれていて、多くの人がそそいでも灌仏盤があふれる心配はなさそうである。
法隆寺の甘茶仏は左手が天をさす珍しいものであった。

立会人

死票を無言で投ず花の昼

知事と県会議員選挙の日。

投票所入り口の満開の花とはうらはらに、投票所は閑古鳥。われら夫婦以外は役所の人間と立会人だけ。
花の日曜日と重なったことよりも、全政党が推薦の知事選とただでさえ指定席の定員減の県議選では闘う前に結果が見えてる選挙とあっては白けるのも当然であろう。
せめての意志を投票箱に放り込まんとするとき、パイプ椅子の立会人ふたりと目があった。

燕の季節

川幅のかぎり猟場につばくらめ

大和川の川幅いっぱいに燕が飛んでいる。

不思議なことに堤防をはみ出しては飛ばないようだ。
今のところは川や河原には餌になる虫がいるのだろう。
住宅地に入ってくるのはこれからだろう。

餌の時間

エイチビーのポキポキ折るる遅日かな
永き日を捨つるつもりの書の前に

ずいぶん日が伸びてきた。

うっかりすると、猫どもの夕食の時間をとっくに過ぎていたりする。
もう炬燵にも入るような季節ではないのでうっかり昼寝ということもなくなった。ますます時間がだぶつくわけだ。
書棚一段分明ける必要が出てきたので整理にかかったが、選り分けた本の山を前に一冊をぱらぱらとめくり始めるともう止まらない。おまけに調子の悪いシュレッダーをごまかしごまかしもして結局数日もかかってしまった。
さあ、騒いでる猫どもに餌をやらなくちゃ。

百草園

かたかごの花のしりへを城山へ
かたかごの花のなぞへに城下町
かたかごの褪せたる花のそよぎかな

森野薬草園は宇陀松山城の麓にある。

城下町の面影を強く残す町から急な石段を登ってゆくのだが、その途中の斜面がカタクリの群生地となっていて先月末から咲き始めた。
今年こそ行かねばとその時期を探っていたのだが、つい出遅れて今日になってしまった。案の定もう盛りは過ぎたとみえて、花は褪せが目立つ。それでも七曲がりする急磴の斜面いっぱいに咲いているのは壮観である。
振り返れば、持統天皇の薬狩りで有名な安騎野の広がりが眼下にある。
ツムラなどよく知られる薬メーカーのいくつかはここが発祥地である。
急磴を登り終わると薬草園が山の斜面にひろがり、その種類だけで200以上。文字通り百草園であり、ふだん見なれた草の大方は薬となると知って驚かされる。
薬草とはいってもそれぞれ花も咲かすわけで、カタクリだけではなく春、夏、秋といろいろな花も楽しめるようである。
花の季節も記したパンフレットがもらえるので、それを見ながら季節ごとにも楽しめそうである。

また、薬草園のすぐ脇を城山へ通じる立派な道が整備されていて、さらに500メートルほど行くと到着できるようである。
ここもまた、次回の楽しみにとっておくとしよう。