予感

開かんとすれど冷えにし姫みずき

日向ミズキの別名である。

ようやく蕾がふくらんできたのでまもなく咲くかと楽しみにしていたのだが、この寒さに足踏みをしているようである。
隣に植えてある雪柳はとうに白い花を見せているので、日向ミズキ独特のやや緑がかかった黄色が加わるのが毎年の楽しみなのだが。
今日も何度か雪の混じった雨の日。昼間はかろうじて日が出たものの夕方になるとぐんぐん冷えてきて、これはもう真冬の寒さとなった。何度も霜にあたりながら順調にきていたエンドウも、さすがに二日連続の冷え込みに先端の芽がやられてぐったりしているのが哀れだ。この分だと今年の農家も天候には苦労させられるようないやな予感がしてならない。

道の駅

雨寒し春分の日の甲子園
お彼岸の小菊買うなる平群かな

たまに日射しはあったものの。

雨かさもなくば曇、しかも強風である。午後には雪交じりの雨も加わって、昼夜の時間が半ばする日と言うのにその昼夜の区別もつかない空模様である。
この春から低反発のバット採用となった甲子園。ただでさえ飛距離がでないのに右から左への強風。そんななかでも選手はしっかり風に負けないプレーで全力をぶつけ合ういい試合が続いた。
大会ホームランも激減して、これから勝ち進むにつれて、きっときめ細かいベースボールが増えてくるだろう。見どころ満載である。
ところで、お隣の平群は小菊の産地。花の保ちがだんぜんいいし安いから、仏壇のお花も平群の道の駅で買う。この時期道の駅は奈良特産イチゴ「古都華」を求める人で満車、大阪ナンバーも押しかけてくるぐらい人気でなによりなことである。

放置

プランターのきのふ無かりし蒲公英黄

突然長年使っているプランターに蒲公英が咲いた。

植えっぱなしのニラもさすがに今年あたりは植え替えしなければと思いつつそのままになっていた。そこに今日突然に黄色い蒲公英がひとつ、それもかなり大きいのが咲いて目を引きつけたのだ。
花が咲くということは、種が飛んできて根を下ろし葉っぱも十分ひろげているわけで、少なくとも半年以上、いかに毎日目をかけてないかがばれてしまった。
蒲公英の根は太くて真っ直ぐなのが深くまで張るうえ、多年草だからこのまま放置するととんでもない大きさの根に成長してしまってプランター全体を占領しかねない。
この雨が止んだら、ニラの株分けを兼ねてプランターの土も更新してやらねばと思う。

親の目

卒業のともに制服つんつるてん

昼前に子供たちが下校してくる。

胸に大きなピンクのリボンをつけてもらって肩を並べて歩く父兄も着飾っている。
どうやら当地の小学校の卒業式があったらしいと分かる。
小学校六年生となれば急に身長が伸びてきて親たちとたいして違わない子も多くなった。
公立ながら制服の決まりがある学校なので、そんな子たちは制服の上着も下の半ズボンもパツンパツンにはちきれている。
この子たちが四月になって中学入学ともなると、今度は一転してダブダブの袖にぶかぶかの長ズボンの制服に替わるにちがいないと思うと、親の目になって子供たちの成長がまぶしく見えてくるものだ。

根雪

嫁ぎ来し国を呪へる雪解どき

母の口癖だった。

三月の今ごろになると、雪解けでなにもかもが泥に覆われるかつて暮らしていた北陸の土地を嫌った。新婚当時夫(私にとっては父)の仕事に従って異国にやって来たが、この根雪が解けた泥濘の暮らしを一番嫌った。このことを後年何度聞かされたことか。
昔とちがっていまの北陸には根雪はほぼなく、降ってもすぐに解けてしまうらしいので雪解けに難儀するということはもうないはずであろうが。
私の生まれたその日は大変な大雪であったそうな。

着々と

触るるもの蔓にからませ豆の花

防寒に仕立てた藁であろうが、笹であろうがお構いなし。

気温が上がってきて豆の蔓がぐんぐん伸び出した。早いものはもう花をつけている。花が終わるといわゆるえんどう豆。若い莢のままを採れば絹さや、青い実まで待てば実豆。最近は絹さやと実エンドウのいいとこ取りのスナップエンドウもでてきて賑やかな春の畑をいろどる。
ここ二日ほどの好天をさいわいに春の農作業が着々と進む。

棚上げ

メガソーラー工事中断山笑ふ

遠目にも痛々しい。

今日のように天気がいい日はなおさらだ。
ソーラー発電基地を作る計画で始められ山膚がざっくりと削られてから、詳細を知らされてなかった住民が反対して開発を許可した県も棚上げせざるをえなくなった土地だ。
山土が剥きだしになったまま、周囲が芽吹きの兆しをみせていよいよ山にも春がやって来る。