夫婦愛そして動物愛

盲導犬連れ添ふ径の忘憂草

万葉読書会に毎回盲導犬を伴って参加する人がいる。

会場ではまったく声も立てず感心するばかりだが、飼い主も心得たもので、読書会が終わるとすぐに広場に連れ出し大きな木の蔭で用をたさせたりして労っている姿を見るだに心温まる。
ご主人と思われる付き添いもいて、かいがいしく夫人とわんちゃんの面倒をみておられる姿もまたいいものだ。
爽快な気分にしてもらって、しばらくは万葉の径を散歩して心豊かに帰路についたのである。

進水

孟宗の天突く径のいや涼し
孟宗の青根むき出す径涼し

万葉講座には時間があるので、酒船石遺跡まで足を伸ばす。

竹林は雑音を吸収して静かだ。ときおり吹く風の葉ずれが聞こえる程度。
丸太で土留めされた階段を登る径は足裏にやさしく、ところどころに青根が顔を出す。
今日は33度くらいあるわりにはヤブ蚊も出てこず心地いい。
今日初めて気づいたのだが、酒船石の置かれているところは傾斜がついていて大きな石は今にも動き出しそうだ。そうなれば文字通り舟の進水、出帆であるのだが。
酒船石をあとに飛鳥寺へまわり、草木の名札をひとつひとつ確かめながら会場への万葉の径を楽しんだ。
いい時間であった。

何故か、ネットワークが不調のようらしく、昨夜の投稿が失敗していたようだ。
さいわい、下書きが残っていたのでことなきを得たが、最近翌日まで気がつかないことが多くなった。パソコンのレスポンス、サーバーのレスポンスいずれも悪いと、こういった失敗を見逃してしまう。

リコピン

脇芽摘むあをきにほひのトマト畑

実が青い。

なかなか赤くならないものだ。
そうこうしているうちに、脇芽だけがどんどん成長してくる。
おそらく窒素系肥料が多いせいかと思う。
指にトマトの青臭い匂いをつけて戻ってくるのが日課とも言えようか。
テレビの番組で、トマト、とくにミニトマトの方がリコピンなる成分が多く、肥満防止、血管のコレステロール沈着を防ぐ役割があると聞いて、翌朝からサラダのミニトマトの数が一二個増えたような気がする。

あっさりと

水飯の胃の腑にするり落ちて昼

だんだん胃の方も元気がなくなった。

ご飯を食べるのも面倒で、冷たい麦茶でお茶漬けだ。
ぜいたくなおかずも要らず、残りもので十分。
脂肪の蓄えもあるので当分大丈夫だろう。

期待もされず

しもつけや市井に生きて似非詩人
しもつけや賞罰特になき履歴

目立たない花だ。

名前も知らず一生を過ごされる人は多いと思われる。
それは花自体が地味というか、むしろ花と言うより泡の粒の集まったようなものだからだろう。
しかも、6月頃から秋まで散らず咲き残っているせいもあって、いつが盛りかさっぱり分からないこともあって注目度が極端に低いのだ。
探せばいろいろな場所に植えられているのだが、何しろ桜や藤などのように「咲くのを待たれる」たぐいの花ではなく、ほとんどの人に見逃されているようだ。

夏遠し

鶏鳴の夜具たぐり寄す梅雨寒し

タオルケットじゃ寒い。

夢もうつつで足もとの夜具を引き寄せる日がつづく。
Tシャツ一枚では昼寝どころではなく、簡単には暑い夏はやってこないようだが、東日本ではもっとひどいとも。
暑ければうらみ、寒ければこぼし。さて、今年の夏の行方は。

段ボール箱の空気枕

アマゾンの函を枕の昼寝かな

眠くなったら近くのものを手当たり次第枕にする。

手に届くものがなければ、文字通り手枕で。
ただ、夏はこのやり方はさすがに肌と肌とが触れあってべたつくので気持ち悪い。
アマゾンというのは、何でもかんでも空気をたっぷり詰めた函に品物を梱包してくる。何とももったいなあと思うばかりだが、作業の標準化やら、効率化、宅配業者の便宜などのためにこの方式を採用しているのだろう。
たった一冊の本でもそれなりの厚さの函になるので、これがちょうど昼寝の高さにいいのだ。段ボールでできているうえ、中が空洞だから熱がうまく逃げて枕にはかっこうの材料となる。
ただ、人間の頭というのは体重の一割ほどはあるというから、その重さをうまく支えるように箱の角や稜線をうまく使う必要がある。
寝返りを打てば外れてしまうから、長々と寝てしまう傾向にある筆者には適っている。