柔らかい

約束の筍とどくチャイムかな

チャイムが鳴ったので自治会費の集金かと思いきや。

恒例の生駒山地の筍である。
聞けば、年々収穫が不安定になっているらしいが、今年も辛うじて収穫できたもののうちから何本かいただいた。ありがたいことである。家人曰く、掘りたての筍は包丁がさくっと入るということである。
さっそく今晩のメニューは筍ご飯に、筍入り春巻き。畑のサラダ玉ねぎも口に溶けるように柔らかい。

死を身近に

朝掘の筍提げし男はも

句友の訃報が信じられない。

やあ、と言いながら農耕で日焼けした顔が句座につく。高取町の祭りの重役を務め、カラオケ仲間には毎月新作を披露。
今頃は筍、秋ならば里芋やサツマイモを句友に分けるため車に積んでくる。
そんな彼も、1年半ほど前から厄介な肺炎にかかり何度か入退院を繰り返していたが、ふだんの元気な姿が頭にあるのでみんなは句会に戻ってくるのを信じて疑わなかったのである。
それだけに突然の報に一同のショックの度合いは大きい。
句座の平均年齢が高いこともあって、別れはいつでもあるものだということを現実に突きつけられ茫然とするのみである。

山椒の香も添えて

筍の雨後の泥つけ引かれけり

包丁がすっと入った。

孟宗のそれはそれは太いやつだったので、俎に思い切り押さえつけて刃を入れたら、これが以外にさくっと切れたので拍子抜けしてしまった。雨後にぐんと伸びた直後だったのかもしれない。
というのは、これは毎年、背後の信貴山中の竹林から採ってきたのをお裾分けにいただくものだが、今年は猪の出没に身の危険を感じながら掘った貴重なもので、猪が見逃した数少ないものの一本だからである。
雨後の短い時間に伸びた筍は、猪だって食べるに追いつかなかった証拠であろうか。
あまりにも大きくて鍋に入りきれないので、頼まれて真ん中で割ったのが冒頭のシーンである。

今日掘ったものだから、刺身でもいけるかもしれないが、いつものとおり一緒にいただいた糠でさっそくアク抜きだ。
鉢の山椒もいまは小粒な若葉で香しい。
たっぷりふりかけていただくとしよう。

掘り出し物

露地売りの筍並べるまでもなく

並べ置くまでもなき筍を売る

裏山の筍今日も掘りて売る

昨日妻がスーパーへ行ったついでに買ってきた露地売りの筍の絶品だったこと。

自分ちの竹林から朝掘ってきたばかりと見える、いかにも柔らかそうで香りいっぱいの筍がスーパー出口の露地で売っていたんだと。あまりにうまかったものだから、今日もと出かけたらすでに完売で明日の入荷は分からないという。おそらく口コミなどもあって、量にかぎりのある筍は並べる間もなく売り切れてしまったのだろう。安くて旨いものはみんなよく知っていると言うことだ。

商売に欲がないと見える売り主には、限られた期間だけでしかもいくらもない量の筍を売ったところで小遣い稼ぎ程度にしかならないだろうが、こうして気候もよくなってくると畑作業に精出して働けることを喜んでいるに違いないし、まして旨かったと言っては毎日でも買いに来てくれる客のあることは何よりの励みとなろう。

一年を通した竹林の手入れなくしてうまい筍は採れないという。また来年もいいものを提供してくれることを期待して売り主のつつがなきを祈る。

旬のもの

春筍の土佐煮食す夜また余震

久しぶりに地震警報があったが、あれを聞くと反射的に身構える習慣がついたようである。

1年たっても相当規模の余震が依然として続いている。
このまま日本列島が地震活発化し、近いうち本当に大地震がやってくるのだろうか。
十分な備えはもちろん大事だが、来たら来たでその時勝負。
せめて旬のものくらいゆっくり味わいたいと思う。