旧参道

旧かなの路標かたぶき冬ざるる

雨に閉じこめられた一日。

十一月の雨はときに冷たいものがあるが、今年はどういう関係だろうか意外に暖かい雨が多い。
今日も朝の冷え込みがやわらいだせいか、昼間の気温がたいして上がらなくても寒く感じることはなかった。
暖房することなく普段着で過ごせるのはいいが、ここのところ秋の季題ばかり詠んでしまうのも季節感がすこしずれてきていることもあろうか。
信貴山旧参道にある今にも傾きそうな古家の角に、これまた傾いた古い道標がある。曲がりくねりながら徐々に登ってゆく旧道は道幅も狭くてレトロな佇まいはそのままである。その街道を囲むようにある新興住宅地の明るさと比べ、その落差の大きさにかえって旧道が冴え冴えとしてくるような気がするのである。

凍結?

融雪剤積んで四つ辻冬ざるる

道の角などに融雪剤の袋が積まれていると、いよいよ冬だなあと思ふ。

盆地は底冷えするので、一番寒い朝ではマイナス五度あるいはそれ以上くらいまだ気温が下がる。
そうなると橋の上など凍結しやすくなって、そのためだろうが融雪剤が橋のたもとに置かれてある。
実際には雪の道路などが昼間に溶け出し、それが凍るということが通常であろう。
家の前の道路は信貴山へ続く坂道、峠の始まりの部分であるので、雪の日などはとくに下りが恐い。
タイヤが重くて去年はとうとう冬タイヤへ履き替えるのをさぼったのであるが、果たして今年の冬の寒さはどうなのであろう。

端境期

戸をたてて直売店の冬ざるる

予報では太陽が顔を出すはずが終日曇。

気温も予報より低い。
世がすべて暗く見えていよいよ冬の感が強い。
近所の野菜直売店も最近は休みが多い。秋物と冬物の端境期でもあるのかもしれない。

精気なし

盗掘の尽くされ墳墓冬ざるる
円墳の道路に割かれ冬ざるる

数日見ないうちにいつもの散歩道もすっかり冬になった。

残った紅葉も精気はもはやなく、冬紅葉という名にふさわしい。そして、散りしいた紅葉葉とあいまって一体がうすぼんやりと紅葉明かりに包まれているようでもある。
こうしてさらに歩を進めると、盗掘されて土器くらいしか発見できなかった古墳や、後円墳の部分がぽっかり削られて片道二車線の立派な道路に変わり果てているさまに、どことなくそぞろ寒いものを感じるのだった。

頭上高く

白き実や冬ざれの街点すごと

どうやら東大寺近辺は南京ハゼが多いようである。
南京ハゼは紅葉が見事らしいが、1月ともなるとたわわに実った白い実だけが残る。

たしか県庁裏だったように思うが、背の高い街路樹に直径1~2センチほどの白い実がいっぱい成っていた。
調べてみると”南京ハゼ”の実らしい。
ろうが採れるというから、これらがいっせいに歩道にこぼれたらどうなるんだろうと想像してしまう。