陽転

掃け雲に薄ら日もるる冬菜畑

気温が低いながら穏やかな日である。

空をあおぐと飛行機雲がうすく広がったのかどうか、うっすらと掃け雲が広がっている。
それらを通してさしてくる日射しは柔らかく、枯芒や畑の葉物などをきらきらと輝かせている。
今日から学校は冬休みに入ったようで子供たちの姿もあまり見ないし、行き交う人もこの寒さではさすがにまばらだが強ばった体をほぐすためにも短い散歩に出た。
合計一時間にも満たない散歩だが、体を温めるには十分で帰ってからもしばらくは体がぽかぽかしている。
昨日の陰の極みを抜けていよいよ春に向かう「陽転」である。あと二月ほどがんばろう。

めいめい

不揃ひは漬けると婆の冬菜畑

冷え込んできて冬菜の収穫時期となった。

めいめいの畑で春菊、大根、小蕪、小松菜などとりどりの冬菜がいちだんと甘くなる季節。
夕方に来ては幾ばくかの菜を摘んで帰るひとが多く、スーパーなどのポリ袋からあふれんばかり。一目で今日は鍋と知れる品目がのぞいたりして、それぞれ味自慢。
夏野菜とちがってそめいめいの冬菜がそれぞれ違っていてそれもまたいい。

最後の砦

ざりがにの避難先なる冬菜畑

稲のなくなった田の生きものたちが畑に混入してくる。

いちばん多いのがイナゴ。これがバッタに混じってキャベツの襞に隠れるようにへばり付いている。
なかには絶対畑にいるはずのないアメリカザリガニの骸がころがっていたり。
冬眠するカエルや田螺(も?)などの水中生物をのぞき、住み場所をなくした生きものたちが最後の砦に隣接する菜園に活路を見出だそうとしたのだろう。