後世託すに

夏蝶の付点音符をきざみつつ

何を探しているのだろうか。

ひらひらと来てはまたひらひらと、翅の休まらぬまま飛ぶばかり。
振幅が大きいというわけでもなく、優雅なリズムを刻みながら上下に揺れ動くさまはまるで五線譜に音符を落としてゆくようである。
柚子の葉がもう少し成長して、後世を託すに足るまでになれば翅をやすめることがあろうか。

ホームセンター通い

もつれつつ大和川へと夏の蝶

今日もさわやかな薫風。

昨日今日とホームセンターへ行っては、あの苗この苗この種と買うのに忙しい。
胡瓜のネットを張り、苦瓜のネットも二年ぶり。
前回は二人暮らしでは食べきれないくらいの収穫だったので、このたびは一株ずつに抑えたがはたして。
そうこうしているうちに明日はもう夏。目にした蝶も薫風に流れるように車窓を過ぎっていった。

網戸を張り替える

黒猫の首振る先の夏の蝶
家猫の視線いたぶる夏の蝶

寝ているか、起きて外を見ているか。

我が家の猫たちの一日である。
起きているときの猫たちは窓の外を見るのが大好きである。ことに、掃き出し窓は庭がすべて見通せるので、カーテンを開けてやると必ず集まってきてはしきりに外を見ている。
そして、首を左右上下に振り出したらそれは鳥か虫を目で追っているときである。蝶の場合はひらひらと飛ぶので首を振るのも忙しげである。

ときに破らんばかりに威勢よく網戸に飛びつくことがあるので、ときどきは見ておかなければならないのが面倒となる。現に、破られた網戸が一枚あって放置していたのが、暑くなってからは風を入れる必要から張り替えたばかり。最近のサッシは背高で張るのも一苦労だとこぼしながら。

ここにも

夏の蝶低みに卵産みにけり

庭にアゲハチョウがふらふら飛んできた。

飛んできて、柚やレモンの木のまわりをやはりゆらゆら舞っている。夕方調べてみると、去年より古い葉にもいっぱい卵を産みつけているようだ。
普通なら孵化した幼虫が食べやすいように、今年芽吹いた柔らかい葉に産みつけるはずなのに。よほど葉を選んでられないくらい弱っていたのかもしれない。ここにも早い真夏の到来の犠牲者がいたのだ。

早苗田

束の間の平穏なりし夏の蝶

田植えが終わった田に静寂が戻った。

蝶がきたかと思うと、シオカラトンボものんびり飛んでくる。
暑い暑い夏に向けてやることといえば雑草取りくらいで、暫くはこの里で人の姿を見ることは少ないだろう。

(写真)田の奥にある白いビニールハウスで苺「飛鳥ルビー改古都香(ことか)」が生産される。前に書いたが、これは大きくて抜群に甘い。奥中央が斑鳩神社。そのすぐ右横がカイツブリの池だ。

揚羽蝶の残したもの

山椒の実だけ残りて夏の蝶

鉢植えにして3年目の山椒が、今年は背丈も50センチ以上まで伸び、おおいに新芽の恵みを楽しませてもらった。
ところが、山椒とか柚などの柑橘類は蝶の幼虫にとっては大好物なのだ。
だから、蝶が飛び始める時期、最初のうちは産みつけられた卵を見つけては丹念に駆除をしていた。
ところが、うっかりしているうちに、おびただしい数の卵が産みつけられたとみえ、それらが一斉に孵化して幼虫になっているのを発見。
こうなると、つぶすには可哀想だし、なにより捕まえたときのあの甘酸っぱい匂いに閉口してなせるがままに放置することにしたのだが、当然ながら全てが羽化する頃には無惨にも鉢は枝だけを残した丸坊主に。

いよいよ枯れてしまうのかと半ば諦めていたのだが、数日後山椒は丸裸となった枝の先から再び元気な新芽を伸ばしているではないか。

やあ同類

わが影に翅を休める夏の蝶

今朝いつものように、愛車ケルビムで喘ぎ喘ぎ戦車道路経由小山内裏公園尾根コースを走った。
終点で休憩していたところ、全体に茶褐色で裏に星がふたつある珍しい蝶が、突然手にしていた地図の上に停まったので驚いた。
蝶は、そのあとも、まるで私の休憩につきあうかのように、傍で翅をゆっくりと上下させているのだった。