老の功名

空耳にチャルメラ響く寒夜かな

坂にある住宅街のせいか屋台というのは滅多に巡ってこない。

越してから一、二度、拡声器からこぼれる焼藷屋の声をかすかに聞いたような気がするが、それも今はめっきり聞かない。おそらく若い世帯の多い団地では声のかかることがなかったのであろう。夜鳴きそば、ラーメン屋さんも同じくやってこない。
やはりこれらの商売は、午後八時を過ぎると店という店がぱったり閉まってしまう土地柄には馴染まないのであろう。
以前は駅から二分というすこぶる便利なところに住んでいたので、ちょっと小腹がすいてラーメン食いたいと思えば何軒もある店によりどりみどりで足を運べたり、ちょっと甘いものを食いたいと思ったらこれも五十メートル足らずにミスドがあったり、すこぶる重宝したのであったのが懐かしい。
NHK奈良局から流れる街の映像は真っ暗だし、「寝倒れ」と言われる県だけのことはあるが、これもまた馴れてしまえば当たり前のこととして受け止めることができるようになったのも老の功名と思うしかない。

レパートリー

軒下に岡持返す寒夜かな

家人が9泊10日の別荘生活から帰ってきた。

今晩は、そのお祝いである。
いつもと違うのを食べたいというので、ピザの宅配を頼んだ。
ピザは段ボールにパックされて、さらに保温材に包まれて玄関まで届けられるわけなので、岡持ちという時代がかったものには無縁だ。

別荘生活に馴染んでしまったせいか、家事が不如意なので当分はアシストする予定。
料理のレパートリーもしぜん増えるだろう。

冴え渡る

機影かと見紛ふ寒夜の星なりき

関空方面に向かう旅客機についてはすでに書いた。
皆既月食の翌夜は風もなく、月が青々と冴え渡っている。

いつものように盆地の南方向を見ていると、南東の空低くに明滅するものがあったので旅客機だとばかり思ったがちっとも近づいてこない。やっぱり星だ。今夜はやけに空が冴えているようだ。