空耳にチャルメラ響く寒夜かな
坂にある住宅街のせいか屋台というのは滅多に巡ってこない。
越してから一、二度、拡声器からこぼれる焼藷屋の声をかすかに聞いたような気がするが、それも今はめっきり聞かない。おそらく若い世帯の多い団地では声のかかることがなかったのであろう。夜鳴きそば、ラーメン屋さんも同じくやってこない。
やはりこれらの商売は、午後八時を過ぎると店という店がぱったり閉まってしまう土地柄には馴染まないのであろう。
以前は駅から二分というすこぶる便利なところに住んでいたので、ちょっと小腹がすいてラーメン食いたいと思えば何軒もある店によりどりみどりで足を運べたり、ちょっと甘いものを食いたいと思ったらこれも五十メートル足らずにミスドがあったり、すこぶる重宝したのであったのが懐かしい。
NHK奈良局から流れる街の映像は真っ暗だし、「寝倒れ」と言われる県だけのことはあるが、これもまた馴れてしまえば当たり前のこととして受け止めることができるようになったのも老の功名と思うしかない。