いざや

寒明けてやらねばならぬいくつかな

待望の立春、寒明である。

今まで寒いのを理由に先延ばしにしていたことがいくつもあって、そろそろ腰をあげねばなと思うのである。
まず一番は芽や根が動き出す前の移植、剪定・枝更新、寒肥があげられる。
ほかにもいろいろあるが、天気とも相談しながら、ともかく炬燵から出でていざやというわけである。

若草山

一日で失せし三笠の春の雪
寒明の雪の一日かぎりかな

若草山が一日でもとの末黒に戻った。

昨日のニュースでは若草山の珍しい雪景色を楽しんだが、今日市内に行ってみると雪は跡形もなく消えて、山は白から黒への見事な変身である。

観測用標準木

寒明や上枝ゆるまぬ標準木

かんあけやほつえゆるまぬひょうじゅんぼく

奈良地方気象台というのは聖武天皇さんの御陵の隣にある。

一条通から緩い坂を登っていった小高い丘の上にあるので見晴らしもよく、盆地のどの山までが確認できるかでその日の見通し度合いを測っていたりもするらしい。
最初、東京の桜の標準木というのは靖国神社にあるのは知っていたので、ここ奈良でも気象台と言うからにはどこかに観測用の標準木があるにちがいないと楽しみにしていたら、なんと門から建物へ向かう急坂のサイドに植えてある樹木がすべて標準木、副標準木だという。しかも標準木の種類というのは桜(染井吉野)だけかと思っていたら,他にもイロハモミジ、ヤマツツジなどなどいろいろあって新鮮な発見だった。

昨日の掲句のコメントに書いた百葉箱の他にも、いろいろ認識をあらたにする話がいっぱい聞けて興味がつきない見学であった。果たしてこのようなハイテク機器を駆使するようなところで句材などがあるのだろうかと不安に思っていたが、先輩諸兄姉はさすがに上手に拾い集めておられて己の未熟さをまたまた自覚するのであった。

アフターミィーティング

立春の風向計の目まぐりし
寒明や光乱るる風向計

第一火曜日はまほろば句会の日。

今回は奈良地方気象台への吟行だった。
この2月というのは、春とはいえ春を実感するようなものが少ない上、季語も少なくてそのこと自体が季材に乏しいことを示している。まして今日は昼頃に冷たい雨または雪だという予報だったので、果たして短い時間内に規定の作句ができるかどうか不安でしかないスタートだった。
どうにかこうにか義務は果たしたものの、やはり出来はもうひとつ。
考えてみればこういう日は当然ある、というよりほとんどがそうなわけで、さっさと頭を切り換えて句会後の茶話会を楽しむことにした。

茶話会が終わったら夕方5時。外はまだ十分明るい。日脚は相当伸びているのだとあらためて思うのだった。

寒肥

寒明や封を切りたる油かす

寒肥という言葉があるが、立春後の施肥はなんと呼べばいいのだろう。

図書館前に木洩れ日の道という小さな広場があるのだが、この一帯を管理する業者がいて、綿花油粕を主にして骨粉を適当に混ぜながら施肥したり剪定しているのだった。ちょっと残念なのは地面に届こうかという立派な枝垂れ桜の枝まで思い切って刈ってしまうのだった。

しだれ咲く前に桜の剪られたる

光のカーテン

苔寺に木漏れ日遍し寒明る

秋篠寺金堂跡の苔庭園
苔寺としてもよく知られる秋篠寺。

金堂跡の苔庭園には木漏れ日がきらきらとあふれ、幾条もの光がさしてカーテンのように見え、まるで水族館の底のようだった。