取り戻せ

出そびれたる梅にも春の立ちにけり

梅の第二弾が続かない。

先月下旬の寒波である。
続こうとしていた蕾もすっかり萎縮したようで、固いままである。梅は半月ほどのあいだ時間が止まったかのように動き出す気配もない。
日中は10度になるという予報だったが、今朝もマイナス三度、昼も暗い雲が覆って気温が上がらなく風が冷たい。
外水栓が凍る、そんな日でも暦ではもう春。
梅にはがんばって春を取り戻してほしいものである。

一日の儲け

立春の親しと思ふ光かな

一日早く春が来た。

120年ぶりだという。
立春と言えば2月4日と刷り込まれているが、今年は2月3日が立春に当たるというのだ。
一日儲けたはずであるが、さっそく寒の戻りかと思う風の冷たさである。
すぐにまた暖かい日が来ると言うし、春の足音を楽しもうと思う。

ジェットコースター

立春に絞りし酒のラベルかな

奈良は清酒の発祥地だそうである。

室町時代に市内の正暦寺ではじめて醸されて、その伝統をほそぼそとつないできたが、最近は清酒発祥地を合言葉に県内醸造元にも種母が配られて各社はその味をアピールしている。
いずれも地元消費が多く、必ずしも全国的な知名度は高いとは言えない。今日立春の朝に絞ったものをめでたい「立秋朝絞り」として即日出荷されたのも固定的な顧客宛であったという。
なにごとも欲の少ない県であるので、商品を県外にまで販路を広げる動きも鈍く、移住者からみると歯がゆいと思うことが多い。

それにしても気温の上下動が激しい。4月の陽気かと思ったら今夜にもすぐに逆戻り。ジェットコースターのような気温で体調を崩されることのないよう。

向こう三軒両隣

立春や豆の末路のあからさま
立春やよべの名残の隣家にも

キヨノリ君のコメントに書いたことですが、今日は外の方が暖かい感じ。

今夜から雨もしくは雪という予報ですので、ほんの一日の春を楽しんでいます。
朝刊を取りに出ると、昨夜撒いた豆たちが、通勤の人たちにでしょうか踏みつぶされて歩道に張り付いていました。

最近の二重サッシの窓ではさっぱり外の声が届かないせいか、昔のように「あ、お隣もやってるな」という風情・余韻が伝わってこないのがちょっとさびしい気がします。セキュリティの厳しいマンションの節分、これはこれで句になると思いますが、どんな風なんでしょうか。

アフターミィーティング

立春の風向計の目まぐりし
寒明や光乱るる風向計

第一火曜日はまほろば句会の日。

今回は奈良地方気象台への吟行だった。
この2月というのは、春とはいえ春を実感するようなものが少ない上、季語も少なくてそのこと自体が季材に乏しいことを示している。まして今日は昼頃に冷たい雨または雪だという予報だったので、果たして短い時間内に規定の作句ができるかどうか不安でしかないスタートだった。
どうにかこうにか義務は果たしたものの、やはり出来はもうひとつ。
考えてみればこういう日は当然ある、というよりほとんどがそうなわけで、さっさと頭を切り換えて句会後の茶話会を楽しむことにした。

茶話会が終わったら夕方5時。外はまだ十分明るい。日脚は相当伸びているのだとあらためて思うのだった。

雨の立春

立春や造花華やぐウィンドウ

パン屋さんのショーウィンドウに挿してある造花の梅。

何輪もみな満開に咲いていて焼きたてのパンの温もりとともに、一気に賑やかな春がやってきたような艶めきを感じた。