台形の峰

寒晴やキックボードの姉弟あねおとと

寒晴と言うに相応しい今日。

はるか南、近畿の屋根と言われる大峯の嶺々の稜線がくっきりと見える。
そのなかでもやはり近畿最高峰八経ヶ岳の姿形は威厳がある。家からは単独峰のようで台形に見えて周りの山々を従えているようである。
雪は残っているはずだが、それほど白くは見えない。全山が遠目にも白く見えるには例年のごとくあとひと月くらい待たねばならないだろう。
そんな景色がよく見える坂道を、塾通いのリュックと思われるものを背負った姉弟が仲良くキックボードを蹴りながら降りてゆく。キックボードの下りは楽だろうが、昇りとなると大変なのではないかと思うのは子供たちにとっては余計な心配でもあろうか。

日脚

寒晴の峰のひとつに弥山あり

今冬初めて外水栓が凍りついた。

予報では零下一度だったが、もう少し低かったかもしれない。薬缶の湯をかけたらすぐに温む程度ではあったが、例年ならばこうした凍結は二、三度起きるので驚くことではないが、寒明まであと20日ほど。ここ数日は3月並の気温だと言うし、例年より寒い日が多くとはならないような予感がする。
放射冷却で冷えたわけだが、その見返りに今日は一日中よく晴れた。大峯の山々の稜線もくっきり見えた。あいにく山上ヶ岳は数ある峰のなかでどれと識別できないが、私の家からは弥山、すなわち八経ヶ岳がひときわ大きい台形模様で一目でそれと分かる。
どれもうすく冠雪しているようだが、二月にならないとはっきりと真白には見えてこない。つまりこれから二月にかけて通る南岸低気圧による雪を待たねばならないのだろう。
午後五時になっても空はまだ青色を見せている。日脚はじょじょに伸びている。

滑空

寒晴やセスナ低きに近く飛ぶ

林の向こうから急に爆音がした。

セスナが突然現れたのだ。
頭上百メートルもあるかなきかの低空だ。機体に書かれた識別記号はもちろん、操縦している者の顔さえ見えるかだ。
とっさに頭をよぎったのは、ここ一二年何回か八尾の飛行場を発ったセスナやヘリが事故をおこしていることだった。
思わず首をすくめたが、セスナはそんな不安や怒りを歯牙にもかけぬごとく国原を滑っていった。

冬うらら

寒晴や双耳著けし二上山

三月の陽気とか。

大神神社吟行は冬うららで厚い上着も要らぬほど。
十日になるので参拝客も少ないだろうと予測していたが、意外にまだまだ。二の鳥居前の駐車場には長い列ができている。
登拝入り口となる狭井神社からは、次々と善男善女が鈴を鳴らして登っては降りてくる。
一通りコースを巡って、やはり最後は盆地を見渡せる小高い丘に登る。
真東から見る二上山の双峰は遠目にもくっきりと晴れた空に突きだしている。

あたたかい冬

寒晴の集落覆ふ山気かな

珍しく晴れが続いている。

晴れても、厚くて黒い雲がかかるのがここの冬の特徴だが、今のところ雲は白い。白いということは、雲が薄いということだ。寒の内というのに、今年の冬はどうなっているのだろう。
そう言えば、毎年何度も見る風花をまだ見ていないのも不思議だ。

寒い冬を当て込んでいた人たちの心配は、ただ事ではないだろう。