虫喰をのがれ山梔子咲きにけり
玄関先の山梔子が白い。
毎年花の季節の前にかぎって食害があって落胆させられていたが、今年は鬼さんの来ないうちにと咲き始めたようである。
たった一輪。
それでもその白さにははっとさせられるものがあり、思わず見入ってしまう。ただ残念なことに、その白さを維持できるのはほんの数日だけでだんだんと赤茶けた色に萎びてしまう。それがいつまでも落ちないものだから、最後にはただの茶色の固まりの、まるで鉄の錆であるかのような姿になり果てるのが哀れである。それを俳句ではよく「錆びる」と表現する。最盛期には純白のものがあるいっぽうで錆びたものもたくさんその姿をとどめているのもこの花独特の特徴である。