落柿舎

実式部の本懐ならん鳥寄り来

白式部と紅葉した南天

俳人にとっての聖地の一つ「落柿舎」を訪れた。

落柿舎の木守柿

源氏完読記念ツアー二日目の散策を終えてメンバーと別れ一足先に奈良へ帰ることとなったが、そこがちょうど落柿舎から5分とかからない場所だったので、時間は4時を回っていても迷わず立ち寄ることにした。
時期が時期だから二本ほどある柿の木のうち、一本の木はすでに実の一つも残っていないが、同じくすっかり葉を落としたもう一本にはまだまだ成熟した実が残っているのが遠目にも確認できて、すぐにあれが庵だと知れる。門をくぐると、この時間になると訪れる人もまばらで、ときおり次庵の庭からクリアな添水の音がよく聞こえてくる。

投句箱すへて間遠の添水かな

落柿舎に来たメジロ

そのとき、突然目の前の梅の古木のまわりに何匹かのメジロがまるで涌くように集まってきては近くの白式部の実をついばむのだ。ほんの1メートルほど先の光景だっただけにびっくりしたのって何のって。こんな経験は初めてだ。花鳥風月を愛でる俳人ゆかりの庵には、こうして鳥たちだってすっかり警戒を解いてくれているのかもしれない。

橘寺

うつすらと実むらさきとはなりにけり
寄りあうて色づきあうて式部の実
実むらさき枝のもとよりあらわれぬ

色づき始めた紫式部の実
暑いのを理由に出不精になってしまっている。

気温は相変わらず33度くらいを指していて暑いことには変わりがないが、いくらか風が秋めいてきたので久しぶりに飛鳥へ行くことにした。
目当ては、少々早いかもと思うが芙蓉の花である。奈良で芙蓉と検索すると飛鳥寺とでてきたが、さらに酔芙蓉で検索すると今度は真っ先に橘寺と出てきた。橘寺は太子ゆかりの寺で生誕地ともされているが今まで行ったことがないので、まずは橘寺を目指すことにしよう。

西門から入るとすぐに目についたのが紅芙蓉だった。
橘寺の紅芙蓉
まだ咲き始めとみえ、境内にはほかに白芙蓉、酔芙蓉があるがほとんとが蕾すら見えない状態で、見頃にはまだ20日ほどあると思われた。
そんななかでお目当ての酔芙蓉はないかと尋ねまわって、やっと見つけたのが境内の奥だった。
橘寺の酔芙蓉
日が高いせいかまだそれほど紅くなってないが、花弁の底の方が心なしか酔いが回り始めたように見える。

時間はたっぷりあるので天武・持統天皇陵、稲渕の棚田をみたり、先ごろ四角いピラミッド型の珍しい古墳としてニュースとなった、蘇我稲目の墓ではないかという説もある都塚古墳、山田寺跡、飛鳥資料館にも立ち寄るなど、飛鳥三昧の一日である。
飛鳥というのは不思議な土地で、一度来てみたらまたすぐに来てみたくなる。
近いうちに時間をみてまた訪ねてみようと思う。今度は盛りの酔芙蓉、棚田の曼珠沙華などが見られればいいなと思う。