男は弱い

美容院出でて手櫛の新樹風

今日は朝からいかにも5月の天気だった。

若葉がにおうように美しい。若い楓だってまぶしい光をはなって、緑が目にも優しい。
髪伸び放題のむさ苦しさも少しは慰められようか。
家人は髪切ってきて颯爽と薫風に立つ。
やはり男は気が弱くて人に近づけない症候群。畑で虫たちと遊ぶほうが似合ってるかもしれない。

僥倖

白壁の新樹明かりに日の斑

蔭紅葉がひときわ印象的な寺だった。

拝観を終えて順路から外れた庭に大きな楓があって、その蔭が白壁に目にも鮮やかに焦点を結んで際やかに揺れているのだ。
あのときの日の高さ、強さ、時間さまざまな条件が偶然一致したとしか考えられない僥倖の賜物であるのはまちがいない。
以来、白壁があれば蔭紅葉や青葉蔭などがないか探すのだが、なかなか好条件に恵まれることはない。

欅の陰

剪定瘤巨き並木の新樹光

冬の間可哀想なくらい刈り込まれた欅並木に緑が戻ってきた。

欅の若葉の下はブナに似て明るいが、背がすっと伸びた高い木であることも手伝ってさらに開放的な気分になる。
日陰も作ってくれるし、真夏の並木道にはほっとするものがある。秋には秋で、素晴らしい黄葉。そして厚い落ち葉道。冬には、影が舗道に長く伸びて、街路のアクセントにもなる。
初夏の木々の初々しい葉の総称を「若葉」とすれば、木々の緑は「新緑」、みずみずしい緑に覆われた木々は「新樹」。使い分けはけっこう難しい.

急坂

駅すぐに一本道の新樹かな

隣の駅「信貴山口」の駅を出ると急勾配の直線道路が一本に伸びている。

おそらくかつてのケーブルカー跡を拡幅して道路にしたものだろうが、突き当たりの県立高校までは500メートル以上はあろうかというすさまじい急坂である。
これを3年間通学する高校生にしてみれば足腰のいい鍛錬にはなるだろうが、道路を挟んで広がる古い住宅街に住む人々にとっては、お見受けしたところ高齢化もあって、いまや生活には決して便利とは言えそうもない。新緑を楽しむどころか、食の確保すら大変な苦行なのである。

都会ではお年寄り向けのケータリングサービスが広がりつつあるようだが、当地のように何事も全国レベルからは遅れているような地方でこそ、サービスの必要性が高まっているように思う。

アメリカミシシッピーミドリガメ

新樹光嫌はるる亀浮いてこし

公園の新緑がまぶしい。

その明るい光に映える池の畔は、さらに心地いい。
ただ、足元に目をやると頂けない光景も。
甲羅干しに浮いてくる亀のほとんどがあの外来亀なのだ。この冬に猿沢池を浚って200匹程度捕獲したそうだが、当時泥に潜っていたのがまだ100匹以上残っているらしく、繁殖力が強くていったん棲みつくとあとの駆除が大変だということを示している。

古来のイシガメ君たちが駆逐されないように願うばかりである。