和の芸能か

内陣の声明よそに木の葉散る
声明の抑揚絶えず木の葉雨

声明には独特のリズムというか調子がある。

揺れたり、上昇したり、下降したり、せり上がるようだったり、様々な動きがあって素人が簡単に真似できるものではない。
譜面には記号が書かれていてそれをなぞるように「引く」わけだが、西洋の音階という概念を持たなかった和の芸能全般にも通じるものがあるのではないか。

木の葉が散らんとするとき、もしわずかな風でもあれば声明の調子のように、くるくる舞いながら落ちてゆく。声明を聞いていてそんな光景を想像した。

淡い期待

遠目には雪降るごとく木の葉雨

思わず窓に寄っていた。

病棟の長い廊下の突き当たり、非常扉の窓に切りとられた先はまるで牡丹雪が降っているようだったからだ。
よく見ると、それは小さな木の葉が間断なく降る光景だった。

家人が検査のため入院となって病室を見舞ったときだ。
朝から曇りで、この時期いつもそうであるように盆地の南部の空が暗い。
いつ雨が降ってもおかしくない空模様だし、今日は後半冷えてくるという予報を聞いていたので、暗示にかかっていたのかもしれない。

雪ではなくて木の葉だと分かってちょっとがっかりもしたけど。