深呼吸

花柊満ちてふたりの齢重ね

清楚で上品な香がただよふ。

今年もまた花柊の季節がやってきた。
花は咲けども最初の一週間ほどは香りと呼べるものは届かなかったが、この二三日ほどよい香りがあたりに漂う。
春の訪れは沈丁花、秋たけなはの金木犀と並び、初冬の柊の香りが三大香ではなかろうか。
とりわけて上品でいて嫌みのない香りといえば柊であろう。沈丁花の蒸せるような香でもなく、まちかどにあまねく広げる金木犀でもなく、柊はあくまでほんのりなのである。
少し離れれば香りがあることさえ気づかない奥ゆかしさが好ましい。しかも花期が長いこともありがたく、玄関に出るたびに深呼吸してしまうのである。

冬の香

香の拠る処答へていはく柊と

風に運ばれてくる香にはっとする。

お隣さんから、花の名を訊かれた。
地味な花ながら強すぎることなく、かといって決して貧弱でもない香り。へたな香水なら、長く嗅げばクラクラとしてしまうが、これは上品な香りである。
香しいが控え目な匂ひ。春の沈丁花、夏の山梔子、秋の金木犀はそれぞれの季節を代表する香りだが、冬の花柊こそ好ましく思う。

日課

柊の咲いて下枝にあまりなく

蕾の最初の頃は薄緑である。

これが徐々に白味をおびてきて、やがてゆっくりと花開く。
冬の花の習いなのか、蕾から散るまでのそのテンポのゆったりがまたいい。
散るのもあわただしくなく、じっくり花を楽しませてからである。
木犀科らしいが、金木犀とは好対照に長い期間花や香りを楽しませてくれるのだ。
去年だったか、透かし剪定したら各枝に光りが行きとどいたのであろう、上枝はむろん下枝にまで花がびっしりとつけた。
毎朝脇を通り抜けるたび、控え目ながら品のいい香りを胸いっぱいに吸い込むのが日課となっている。
あと一週間ほどは楽しめそうだ。

香を待つ

花柊猫だけが知る通り道

あのギザギザの葉の下を抜けて隣家から猫が出入りする。

太めの猫だが、体を低くしてくぐるようだ。
柊は今年も花をいっぱいつけたようだが、まだ開ききっていないせいか、匂いはさほどまだ強くない。

花が咲き始めたら、次は香りを待つことになる。

猫またぎか

強面の葉を持つてして花柊

玄関脇の柊が随分大きくなってきた。

防犯用に、また隙間を埋めるためにもと植えたのが、去年あたりから花を一杯つけるようになってきた。
今年もこの一週間ほど白い花がびっしりとついている。折角だから香をかごうかと近づいたら、固そうな葉の縁が尖っていてそれが頬を刺すのでびっくりした。

この強面の葉に守られた花というのは、本当に小さく地味で、それだけではたいした魅力ではないが、あの微かな香りがどこからか漂ってくる風情がよいので歳時記にも取り上げられてるのだろう。

木が大きくなって茂った葉を敬遠してか、最近は猫が回り道しているようにも感じるのだが。

魔除けの木

柊の花

柊の花

柊の棘に隠れて花つけぬ

ヒイラギは表鬼門に植えるといいらしい。
一方、南天は裏鬼門。
隣家との目隠しを兼ねて先日庭の隅に植えたばかりだが、今日見てみたら白くて小さな花が密集して咲いている。
え?この時期に咲くの?というわけで調べてみたら11月末から咲くとある。
キンモクセイの仲間で香りも放つらしいが、苗木ではやはり無理のようだ。