長寿の酒

椅子ひとつ空けて旧交温め酒

窓を閉めて湯に浸る季節となった。

窓を閉めるのはもうひとつ理由があって、ひとつ飛んだ空き地を菜園に畑仕舞いの煙だろうか、焦げたような匂いがここ3日も鼻をつくからだ。住宅地の真ん中でものを燃やすのは遠慮してもらいたいものだが、このあたりの元地主の保留地に相違なく昔の感覚で畑で燃しているわけである。
ともあれ、風呂もいつものように長風呂に戻り、浸りながら今日の句を考えるわけだが、とくに季題も思いつかないのである句会の兼題を考えることにする。
重陽の節句というのは9月9日だが、陰曆では10月25日くらい。この日は菊酒を飲むことでも知られるが、健康を願って酒をあたためて飲むという。冬至に南瓜を食うというのと同じようなものである。であるから、「温め酒」というのは単に熱燗や冷や酒と同列のただ温いというだけではない、健康を祈ってという願いも含む季題なのである。
酒を酌むにも三密を避ける意味でも、椅子ひとつあけてカウンターに腰掛けるというのはコロナとの共生のあり方であろうか。
コロナにはご遠慮いただくようお願いする酒もまた本意にかなうことなのでる。

ふろふき大根

猪口とって女将に一献温め酒

燗酒が恋しい季節となってきた。

歳時記に陰暦九月九日から酒を温めて用いれば病なしという言い伝えありとある。
たしかに、虫の声がいつの間にかしなくなってるし、夜の空気が違ってきている。体も温かいものを求めてくるのだろう。
日本酒はうまいが、熱燗は苦手だ。アルコールが一気に蒸発しているようで、口元を寄せるだけで蒸せてしまう。人肌からちょっと熱目というのが合っている。
夜食べたふろふき大根もうまかった。濃いめの味噌味なら肴にはよく合うと思う。

エネルギーをもらう

温め酒恩師ほどよく老いたりけり

帰国中の米寿の恩師を囲んでの会となった。

酒は嗜む程度の先生とは、みな遠慮したのだろうか、日本酒、焼酎をオーダーすることもなく数本のビールだけで終わったが、お迎えのメンバーはといえばみな古稀過ぎで、年齢に応じて健康的な酒量だったのだろう。
外つ国の粋な赤シャツを召した先生からは、お国やEUの世情、健康の秘訣など幅広い話題が提供され、時間はあっというまに過ぎてゆく。
今回は二年分の作品を披露されたわけだが、次回またいつになるか分からずとも、帰国されても先生のエネルギーはまたすぐに充填されることは間違いなく、新たな作品に挑戦されることだろう。
われわれもまた、その時には元気でお迎えできるようしゃんとしてなくてはならない。

句友二歩に(その2)

二歩をよく知る友人たちからいくつかの追悼メッセージをいただきました。
弔句もいくつかいただきましたので、あらためて頁を起こして紹介したいと思います。

芭蕉忌と知りて旅立つ句友かな 南天
二歩さんともう一度飲みたいオールドパー 岩ちゃん
紅葉降り遥かな星へ友逝けり skyblue

(敬称略)

彼の過去作品500点あまりをあらためて読んでみました。
両親、家族や愛犬、そして酒、山、旅。
どれにも優しいまなざしが向けられています。

そう言えば、落語も好きでしたなあ。

温め酒志ん生に酔ひ漢逝く