一匹半

秋刀魚食ふ三匹パックを二に分けて

一匹半はさすがに多い。

しょっちゅう食えるものではなくなって久しいが、秋刀魚はやはり一匹がいい。
いくら小さなものとは言えど。
脂はと言うと、ちょっともの足らないが。

乱獲?資源枯渇?

ああ秋刀魚一尾千円とふ時代

ちゃんとした秋刀魚が食卓にのらなくなって何年だろう。

スーパーで売っていたという家人だが、千円近くもする秋刀魚を食おうとはとても考えられない。
例年だと今ごろは新秋刀魚にも脂が乗り始めて、焼きたてのはらわたのそりゃあうまかったこと。他の魚では得られない独特の食味である。
酢橘、大根とのマッチングもすばらしく、時期が秋にかぎられるのもあって大衆魚の王様中の王様。
鯵だって一尾800円だったといって家人が怒っていた。
福島の汚染水を放流したことで、日本産魚介の全面禁止をした国では日本産かどうかにかかわらず広く海産物そのものの消費が落ちていると聞く。
巷間言われる中国の巨大漁船団による乱獲がやめば、秋刀魚もちとは大きいものが食えるかもしれない。
それとも、海水温の上昇で秋刀魚の資源そのものが枯れようとしているのか。

食習慣

居酒屋に時価となりたる秋刀魚かな

日本の松茸はもはや絶滅危惧種らしい。

それほど収穫が落ち込んでいて、「松茸狩り」などはもう死語に等しい。
菌を育てて松茸の人工栽培が研究されているようだが、実用化にはまだまだという。
庶民にとって秋の食べ物の代表である秋刀魚も惨憺たるありさまで、掲句のような事態になっているかもしれない。
たとえ時価でも仕入れらればいいのであるが、冷凍物だって底をついてしまいかねない今年の不漁である。
日本の食習慣も変わらざるを得ない時代になりつつある。

鰻に続き

食卓に秋刀魚見て来してふ話

貧弱らしい。

しかも高値だと。
庶民の味がまたひとつ遠くなる。この分でいくともう一生秋刀魚を食うことはできないのではないかとさえ思えてくる。
それもやむを得ないと思われるほど地球の温暖化が進んでいる。
鰻は乱獲がたたったということだが、これだけ急に数を減らしているのは単にそれだけが原因ではないような来さえしてくるのだがどうだろうか。

高嶺の花

目黒きて奈良には遠き秋刀魚かな

まだ店頭に並ばぬらしい。

ニュースでは五千匹も目黒に届いたということだが、それも何と冷凍モノとは初めてらしい。
それだけ今年も秋刀魚は不漁だということらしい。
年々小さくなるばかりだが、いよいよ秋刀魚も我ら庶民には高嶺の花となったものだ。
食欲の秋というがその代表の代表であるだけに何とも侘しい限りである。

豊漁

大根をしのぐ秋刀魚の甘味かな

今年は久しぶりに秋刀魚が安いらしい。

暑かった昨日、これまた久しぶりにスーパーにつき合った。
鮮魚コーナーではどちらが言うことなく、即座に秋刀魚を選んだ。
それほど新鮮に見える秋刀魚だったからだ。
刺身にしても食えそうなくらいだが、さすが山国ではそんなフレッシュなものは手に入ることはない。
焼いて食ったが、これまた久しぶりの秋刀魚の腸の甘味。大根おろしの辛味など到底太刀打ちできない、絶妙な甘苦なのである。
今年の秋刀魚は豊漁で安いのはもちろん、ずっと旨い秋刀魚が食えるといいな。

炭加減

腸の焦げて哀しき秋刀魚焼く
銀膚の失せて秋刀魚の焼かれけり
秋刀魚火に旬の脂を惜しみつつ
秋刀魚焦がる旬の脂の尽くるなく
旬の脂噴きてやまざる秋刀魚焼く

庭に火をおこした。

たまには七輪で焼いた秋刀魚を食いたかったからである。
さて、炭火も十分におこり、ころはよしと網にのせたはいいが、あまりの火勢にたちまち秋刀魚が黒煙に包まれ、食べ頃となったときにはもはやあの銀色をした皮や身は溶け落ちて見るも無惨な黒焦げになったうえに、だいじな腸まで落ちてしまった。
火が強すぎたのに加え、秋刀魚の脂がのりすぎていたのだった。脂が炭に落ちて燃え上がるまでになったら、もう火の加減をコントロールするのは至難の業となる。塩二年炭三年ほども熟練の技が必要とされるのだ。
鰯丸干しなどはすぐに焼けるし、皮など少々焦げても文句ないが、どうやら生の秋刀魚だけは、火のピークが過ぎて、火勢が穏やかになってから焼くものだと学んだのである。遠火でゆっくり焼くという方法もあろうが、それでは水分が飛んでしまうような気がするが、はたしてどうだろう。