芋の露 習作

たまゆらの風に耐へては芋の露
芋の露たまゆら風に耐へてゐし

芋の葉にのった露がころころ、あっちゆきこっちゆき。

落ちそうで落ちそうもない様子を詠んでみたもの。
「たまゆら耐へる」というのは、雰囲気としては、すでに類句があるかもしれませんが、自分としてはまあまあできたとは思っています。
前者は、たまに吹く程度の少々の風には葉からこぼれることなく踏ん張っている様子を、後者では、しばらくは耐えていたがやっぱり零れてしまったという様子を織り込んでみました。
どうでしょうか、そんな風には見えるでしょうか?

首肯く

芋の露零れ一山静まれり

雨の日の芋を観察するのは面白い。

雨露が葉の中央に溜まっては零れ落ち、また溜まっては零れ落ちるたびに、葉が大きくお辞儀するように上下し、その零れを受けた葉もまた連鎖するように露を零しては深くお辞儀しながら次の葉に零してゆく。こうして、あの大きな葉の揺れ戻しが畑のあちこちで展開されて、まるでオルゴールの鍵が弾かれるような運動が切れ間なく続くのだ。

飛鳥京跡苑池発掘現場へ

芋の露遠き峰には雨後の雲

雨だが、予定通り飛鳥京跡苑池説明会へ。

いつもなら行列を作るくらい見学者が多いのに、雨のせいか、それとも苑池発掘といってももう目新しくないせいか意外に人が少ない。スタッフの皆さんも拍子抜けされたんではないだろうか。10時のあとは11時、次は13時というふうにセッションも少なめ。おかげでゆっくり見学できた。
今回の発掘対象は飛鳥宮の北東のはずれ、飛鳥川沿いにある迎賓施設の苑池への入り口の建物跡らしい。
場所的には、先週だったか、20歳くらいの若者5人が乗った車がスピード出し過ぎで全員命を落とした現場からは徒歩5分くらい南に行ったところ。

飛鳥の芋畑。奥は多武峰。

車を降りて会場へ向かう頃には雨も止んだようで、放棄田では虫がしきりに鳴き青々とした狗尾草が揺れ、薄羽黄蜻蛉(精霊とんぼ)も群れ飛んでいる。板蓋宮跡から甘樫丘へなだらかな傾斜が続く一帯の田圃は、無農薬農業を実践しているためだろうか、田螺や蜷がいっぱい。小さなおたまじゃくしも泳いでいる。芋の葉も立派に育って雨露がきらきらと光っている。用水を流れる水も折しもの雨も加わって流れには勢いがある。
顔を上げると多武峰からは雲が湧きだしてきているのが見えた。
このようなロケーションなら句はいくつでも作れそうだ。問題は質だけど。

説明会が始まる頃また雨が降り出して、晴れ間にのぞいていた多武峰が雨雲に隠れてしまった。