長い花期

朝に掃き夕に掃きして花南天
築地塀の瓦に零れ花南天

南天の花期は長いようだ。

六弁の花が開くまでも随分時間をかけるが、花が咲いてから散るまでの時間も長いのだ。
しかも、桜のように一斉に咲いて一斉に散るという感じではなく、ばらばらに咲いてまたばらばらに散ってゆく。
この一週間ほど玄関先に散ったのを毎日のように掃いているが、まるで散るのを惜しむかのようにまだまだたくさんの花弁が枝に残っている。この分では全部散るまでにさらに一週間ほどかかるのではないだろうか。

今年はとくに花を多くつけたせいか、そんな感想をもつにいたった。

武の神に献納す

神門の右近さぶらひ花南天

珍しい神社があるものだ。

航空祖神の額と花南天

神門の高楼にプロペラ一基掲げている。
矢田坐久志玉比古神社(やだにいますくしたまひこじんじゃ)である。
古代雄族「物部氏」の大祖神「饒速日命(にぎはやひのみこと)」と「御炊屋姫命(みかしやひめのみこと)」の夫婦神を祀る矢田地方の総鎮守社である。蘇我に負けなければ、国父となってこの小さな社に押し込められることはなかったかもしれない。
プロペラのゆえんは、饒速日命が天より降臨する際、天磐船から三本の矢を放つが、その二の矢が落ちた所と伝わるのが楼門のある場所だと言うことから、「航空祖神」として戦前から崇拝して来られたからである。

武を司った神の本殿、そして航空祖陣。なんともいかつい場所に、米粒のような南天の花が献納されるかのように咲いていた。

玄関脇の

実入りよき米粒めきて花南天

蕾の初期の頃はまるで白い米粒のようである。

玄関脇の南天が、長い時間の経過とともにやがてうっすらと朱がさしてきたのが、ようやく今日あたり雄しべの黄が混じるようになった。開花である。

この春教えられたとおり、伸び放題だった南天を軽く剪定したら風通しがよくなったようでどの枝もいっぱい蕾がつくようになった。このまま順調にいけば見事な実南天が期待できそうだ。