散りはじめ

花筏組初む堰の汀かな

桜が散り始めたばかりである。

佐保川にはらはらかかる花屑だが、いまだ花筏と呼べるほどの量はない。
ただ、両岸の岸、堰の溜まりなどには花びら集まってきている。これがさらに溜まってくるようになると、下流に押しだして筏の体をなしてゆくことだろう。
今は汀の花びらは筏を組み始めたばかりのように見える。

今日は平群の山裾の桜が遠目にも見事だったので、近くまで回り道してみた。
桜にすっぽり包まれたような小学校だった。
この時さあっと風が吹いたようで、見事な花吹雪。
やはり、学校には桜がよく似合う。

盆地を流れる

国ン中を鎮め大和の花筏

日曜日の嵐で大方の桜は散ってしまった。

翌日、花筏を見ようと大和川に出たのだが、あまりに激しい風雨にすべてが既に下流に流されてしまったのかどうか、わずかの痕跡しか見ることができなくてがっかりした。それに引き替え、昨年はそれこそ声に出して興奮するほど、幅80~90メートルの川面全面が花びらに埋まったまま大いに流れていくのを目撃できたのだが。

考えてみれば、国中(くんなか)と呼ばれる大和盆地を走る支流すべてはこの大和川に合流し、国中いっさいのものがこの川から県外大阪へ、そして大阪湾へと流れていくのである。大和川の花筏というのは、国中じゅうの花という花を集めた大和そのものの「花筏」なのだ。そしてこれを限りに大和の里は静けさを取り戻していく。

筏師

棹さすは亀が二匹の花筏

亀二匹棹さすごとく花筏

今、橋の上から筏が流れていくのを眺めている。

その筏の間から亀が鼻先を出している。
よくみるとさらにもう一匹。
たがいに花びらをうまく交わしながら十分な息を吸うと再び潜っていった。

壮観な筏

花筏集めて広し大和川

幅約100ヤードの川一面に花筏が流れていく。

ここは、自宅近くを流れる大和川だ。河口から28キロの地点。
佐保川はじめ飛鳥川など盆地内のすべての川が最終的に一本となったあたりで、その川幅はかなり広いのだが、それが上流で散った桜花で覆われている。壮観といっていい。

先日、奈良の堰堤には桜が少ないと嘆いたが、さすがに全支流分を集めるとこれだけの量になるのだなとあらためて驚かされる。多摩川などよく知られた川でも、これほどの量までは集まらないのではないだろうか。