ミクロの世界

休刊の朝のコーヒー風光る

郵便受けを開けるまで忘れていた。

今朝は休刊日だと。
朝食を終えすることもないので窓の外に目をやると、午前中は晴れだという空が底抜けに青い。
気分よくして外へ出ると、寒くもなく暑くもなく快適な朝である。
すっかり若葉を広げた楓が陽の光をあびてキラキラと輝いている。今日もまた銀色の蜂が姫踊り子の密をせっせと集めている。しゃがみ込んで動きをみているといつまでも飽きないが、足長蜂がやってきたせいか慌てて姿を消してしまった。こうしてミクロの世界では生きものたちが生存をかけて懸命に生きている姿に思いをはせることしばし。
目に見えない空気さえ今日は光って見える。風の春である。

タイミング

リフォームの足場解く音風光る

こんな時期にリフォームに取りかかる家がある。

長期的な見通しにたって計画的に進めてきたのだろうが、それにしてもタイミングが悪い。資材などちゃんと調達できて順調にゆくのやらどうなのか。
ただ、足場を組んだはいいが実際に着手されはしないで、防護幕だけが風にばたついている。
新装なって、青空のもと足場を外す日はいつになるのだろうか。

晩春

翳し見の古代瓦に風光る

表からは見えない。

本堂の横手に回り、振り返って大屋根に目をやれば目に入る。
飛鳥時代の瓦だ。馬子が創建した、最初の瓦屋根寺院・飛鳥寺にあったものを平城京遷都に際しここに移したのが元興寺である。
何度も修築されていろいろな時代の瓦がのっているとのことだが、飛鳥時代のもの200枚ほどがいまでも使われていて、しかも個々に焼きムラが出ていてなんとも味わいがある。
萩寺としても知られていて、その芽も伸び出して、いよいよ晩春の趣が深い。

這えば立て

風光る嬰の産毛の金色に

お隣の次男坊の初お目見え。

と言っても、ベビーカーの寝顔だけだが、シェードをかけてもらって熟睡のようである。
ときおり風が吹くので、その都度生え際の後れ毛が小刻みに揺れて、光を透かしたように明るく見える。

あと一年くらいすると、片言の挨拶が聞こえるかな。