老の手を引いて迂回路冬紅葉
談山神社の紅葉はもう終いに近いらしい。
先日行ったときもやや遅かったかなと思ったくらいだから、昨日今日の雨でずいぶん葉を落としたことだろう。
談山神社の正面は見事なくらい一本の急な石段で登り切ったところが本殿、拝殿の脇となっている。
膝が悪かったりして、この石段を一気に登るのが辛い向きにはなだらかな坂を行く迂回路にまわったり、階段の途中で横道にそれて蹴鞠の広場や十三重塔、鎌足の津まである鏡女王を祀った摂社(恋神社)などを楽しみながら行くのもよい。
境内のどこを歩こうが紅葉が素晴らしく、三大山城の一つとされる高取城のも有名だが、県内ではそれを上回り一番の名所だろう。
それにしても雨が続くので外で詠む機会がない。しばらくは回復しないというので机上の作句が増えるのも止むを得ない。
そうですね、もう俳句の季節は冬。「冬紅葉」になるわけですね。一方都内なんかの紅葉はまだこれから。12月になってからが本番。このへんのズレがややこしい所です。
談山神社、5月に行ったときは新緑若葉がすごかったです。新緑あるところ紅葉あり。奥の細道白河のくだりが思い起こされます。
「秋風を耳に残し、紅葉を俤にして、青葉の梢猶あはれ也」
歳時記を読むと、「冬紅葉」というのは冬になってもまだ散らずに残っていて、色の深さが一段と増した風情を言うようです。暦のうえで冬だからという構図ではないみたい。逆に言うと、秋でも深く紅葉した葉が散り残っていれば「冬紅葉」と詠んでも問題ないということになりますね。
歳時記の世界は本当に深い。
「俤」は芭蕉が好んで使う言葉ですね。また、春にいて秋、冬を思う。秋、冬にいて春を思う。日本人の季節感の面目躍如といったところでしょうか。