瑞々し

墨堤に影を濃くして花は葉に

すっかり葉桜になって、影も濃くなった。

今日の飛鳥は眩しいほどの新緑光。
欅や桜の若葉が目に沁みるように青い。
石舞台を取り巻く桜も葉が茂って、中の様子は外からはうかがえないほどだ。
秋には飛鳥の奥、稲渕の棚田に心奪われるが、この時期は甘樫丘、飛鳥坐神社、岡寺周辺、など飛鳥北部がすばらしい。
先に見える三輪山の全山をおおうほど椎若葉が萌えいでて、山容も際だつようにふだんとは全く別の顔を見せている。
目にも、心にも、みずみずしさをいただく半日だった。

はなやかに

産院のフェンスの薔薇をみとがむる

南に開いた広い庭。

そのオープンなフェンスの丈をこえるように薔薇が咲き乱れている。
産院のもののようだ。
通りすがる人には豪華な花だが、通う人にはどう見えてるだろうか。

むせぶ

脚立探しゐる薄暑の納戸かな

風が入らないところは暑い。

ついこの間春になったかと思っていたが、もうそんな季節になったのかと驚く。
ここ数日の気温はひと月先のもので、今夕の夕立がもたらした風が肌にも心地よいくらいだ。
FAXの調子がいまひとつ悪いので、電話線と共用するべく今日工事してもらったが、モデムを置いてある納戸に入るとむっとするような熱にむせむ。
暑さは家の中より始まるのだ。

ヨーグルトへ

ラベルほど粒の揃はぬ庭いちご

ぽつぽつとしか生らない。

夫婦ふたりにも足らない1個を刻んで朝食のヨーグルトへ。
明日あたり採れそうな粒が一個あって、これは珍しく虫に食われた跡はない。
去年飛鳥ルビーという苗を買って、夏にランナーを伸ばし孫苗の10株ほどを育てたものだが、同じ土を使っても葉ばかり成長するものもあって、手間を考えると結局スーパーで買ってきた方が早い。
食べ頃になると鳥に食われるとも言うが、みぃーちゃんが庭で見張ってるせいか今のところ実害はない。
明日も苺ヨーグルトかな。

減らない実

啄みて明日に熟し山桜桃

見ていて飽きない。

ヒヨが來て、椋鳥が來て、イソヒヨドリも単騎頑張ってくる。
隣地のゆすらうめが日ごとに熟してきて、色の濃い実を見つけては鳥が運んでゆく。
二、三年前までは老夫婦が來て摘んでいたものだが、今は息子さんが雑草刈にたまに来るくらいだ。
今年は椋鳥が大群で来るのを見ないので、実はしばらくの間楽しめるかもしれない。

嫌悪感わかず

紫の花に毛虫の好き好きや

根締めの紫蘭が満開だ。

よく見ると、花茎を這い上って花を食害する毛虫がいる、いる。
毛虫というと、葉や芽などを食害するのが普通だが、葉には目もくれないで珍しいものがいたものだ。
珍しい光景に不思議にも嫌悪感はわかず近づいてみると、黒地に深紅の横縞のあるカラフルな虫だった。

昇竜

神奈備の尾根這い上る椎若葉

龍田から三室山に向けての稜線がはっきり見える。

その稜線にしたがってこんもりと椎若葉が盛り上げているのだ。まるで龍が昇ってゆくようにも見える。
龍田古道の走るこの辺りは万葉に多く歌われ、歌碑もまた多い。
いつか歩かなきゃと思いつつそのままになっているが、新緑の今頃もまた気持ちがいいものにちがいない。