腰赤

補植の手休むことなし夏燕

あっという間に苗で埋まってしまった。

週末を待たず田植があったようで、余り苗も風にさやいでいる。
いまどきはどこも機械植えだが、小さな田などはどうしても隅などに機械が入らないのであとで人の手で植え足すことになる。
今夜も雨らしく燕が田をすれすれに飛んでいる。補植の人がいようがおかまいなしに10羽くらいがしきりに飛んでいる。そのなかで、周りのものとちょっと違うのが混じっているのが目を引いた。
尻尾の近くが背中腹とも赤い。よく見るものよりちょっとだけ大きいような気もする。
帰って調べてみると、日本には何種類かのものが飛来するようで、そいつはずばり「コシアカツバメ」と言うらしい。初めて見るツバメである。

南行

鈍色の雲にアーチの夏燕

青々としてきた植田の空高く、燕が弧を描いている。

曇り空だが雨の気配を感じないのかかなりの高さである。ゆったりとした飛翔は給餌の必要がないのかもしれない。つい先日には何羽ものグループでせわしく飛んでいたので親子だったにちがいないが、今日見たのはその子供たちも独り立ちしたのだろうか。
燕は大阪から大和川を遡ってやってくるのを目撃したが、すると帰途はやはり大和川かもしれない。子供たちは一息先にでかけたか。

子育て真っ最中

夏燕鯉の頭上をすれすれに

燕が水面の虫を追う。

それに驚いたように鯉がはねる。
燕は子育て真っ最中にちがいない。せわしげにタッチアンドゴーを繰り返している。
口の中には子ツバメの餌となる虫をいっぱいためこんでいるのだろう。

子育て真っ最中

開け放つ牛舎突き抜け夏燕

榛原の月例句会の今月は吟行句会。

二年前にも一度訪れた、名張に近い奥室生の山里である。
そこからひとやま越えた、人跡絶えた場所に大和牛500頭を育てている牧場があり。牛舎がいくつも並んでいるが、すでに夏とあって牛舎は全開。むき出しの梁には大きな扇風機がいくつも回っている。
いかにも夏仕様の、その開け放たれた牛舎を燕が一直線にくぐりぬけてゆく。その速さは夏燕にふさわしく素早くて、何度も突撃を繰り返している。そう言えば、牛舎の周りにはまくなぎが牛たちの鼻面をかすめて柱をなしていたし、子育ての餌となる虫たちがきっと多いにちがいない。

好きに飛ぶ

平城宮址狭く飛んでは夏燕
夏燕返してもまた平城京

早くも平城宮址で燕の塒入りが始まったらしい。

平城京に集まるのは帰燕の準備と聞くので、子作りを終えたファミリーなどがどこからか集まって来たに違いない。8月頃をピークに10月上旬頃までみられるとのことだ。
近所では、最近ようやく巣作りを終えて卵を抱き始めたくらいだから、塒入りしたいうのは北など遠くからやって来た群れかもしれない。

峠の牧

夏燕四角に牛舎くぐりけり
黒南風や牧の泥濘ただならず

今日は三重県境にある里山に吟行した。

九十九折の山道をたどると、峠近くからは露湿りの風に牧の匂いが混じってくる。
やがて売られる運命にある牛たちの牛舎に近づくと、その匂いがさらに強くなった。

見渡してみると、雨が近いせいか燕が数羽しきりに低く飛ぶ。
開け放たれた牛舎のなかに飛び込んだかと思うと、そのまま直線にではなく直角に曲がってくぐって行った。