首都圏の雪

明日履いてゆく靴のなし春の雪

東京の方では明日の交通が心配されている。

午後には当県の雨も去ったが、今も静岡から東が雪で明日の通勤時間帯の交通混乱が容易に想像される。
東京西部に住んでいた時は、年に一度は春の雪があって、そのうち何年かに一度は家の前を雪掻きしなければならなかった。
そんなことを思い出させる今回のニュース画像である。
積雪具合いを写メで送って寄こした娘は明日の靴がないことを嘆いていた。
その前に、電車が動くかどうかのほうを心配した方がよさそうだが。

タワー比べ

東京タワー四肢ふんばりて春の雪

ムサシほど高さがあれば上部は雲と雪の中だ。

東京タワーだって上の方はかすんで見えないが、それだけに四方に踏ん張った鉄塔の姿には逞しささえ感じる。
意外に鉄骨は細く、雪はその間をぬけて落ちてくるのだ。
雪の風情は圧倒的に東京タワーが勝ちだ。
3月下旬の都心の積雪は30数年ぶりだという。だとすると40歳くらいのことだが、いくら思い出そうとしてもその記憶が浮かんでこない。4月の雪ならば幾らでも浮かぶのであるが。

二月生れ

産院にタクシー着いて春の雪

最近越してきた若い夫婦に赤ん坊が誕生したらしい。

数日前に家の前にタクシーが來ていたとき、産院へ出かけるのであろうと思ったのは、自治会に入会されたときに、産み月が近いと聞いていたからだ。
一週間ほどしたら、二階ベランダには干し物がいっぱいある。無事にお産もすんでなによりだ。

白い青垣

多武峰古りにし里の春の雪

盆地内では積もらぬが、周囲の青垣の山は真っ白である。

長谷寺を過ぎて隠国、吉隠(よなばり)の辺りに来ると田んぼも畑も真白。宇陀への入り口である西峠近くまでくると道路にも雪が残っていた。宇陀・榛原に入った途端十センチほど降った形跡がある。同じ奈良でもちょっとした山や峠でも気象条件がこれほど違うとは。
多武峰も真っ白。
昔、天武がこんな歌を藤原夫人宛に詠んでよこした。

わが里に大雪降れり大原の古りにし里に降らまくは後 万)巻2−103

藤原氏の里に住む夫人に、
「飛鳥の宮には雪が降ったよ。そちらの古い里はこれからだね」
それに対して、夫人は、

わが岡のおかみに言ひて落らしめし雪のくだけしそこに散りけむ 同巻2-104

「生憎ね。こちらの神に頼んで降った欠片がそちらに散ってしまったのでしょう」と軽く返したという。

「おおはら」は「小原」と書いて万葉文化館あたりをさすという。その辺りが、藤原氏の生誕地とされ、生母の墓もある。
今日みたい雪の日に詠んだのかな。

短い雪景色

梅枝のより梅らしく春の雪

雪が雨に変わって、みるみる雪が解けていった。

解けるまでは、水分をたっぷり含んだと思われる雪が、梅の花や枝に積もっている姿は、やはり梅は梅らしい形をしている。
地面がすっかり雪に覆われて、餌を探すのであろう、ツグミが珍しくその梅の枝にきてあたりを見回していたが、諦めたようにまたどこかへ去って行った。

雪が解けて一安心かと思ったら、また明日から明後日にかけてこの冬一番の寒気、荒れ模様だという。

淡雪

ひとしきり句座のざわめき春の雪

今日は定例の句会。

奈良盆地より幾分気温が低い場所なので、盆地を出たときはまさか雪が降るとは思いもかけなかったが、春時雨が雪模様となったようである。

誰かが窓を見て大きな声をあげると、外は春特有の大きな泡雪であった。

天満さんの梅

拝殿の袖に残りし春の雪

萩原神社拝殿の雪
今日の句会場は天満神社境内の会館。

開始時間の随分前に着いたのは余裕をみておくのは当然として、実際は天神さんの梅を楽しもうという狙いもあった。境内至る所に盆梅があり、梅園もあれば、すでにピークを過ぎたものから、まだ堅いつぼみのものまでバラエティに富んでいる。
しばらく観梅を堪能した後、お詣りしようと拝殿に近づくと、その両脇には数日前に積もった雪がまだ残っていて、しかも汚れも見られない。とくに何をお願いするというではなく静かに柏手を打ってから会場に向かった。