春泥を避ける分別いつよりぞ
年寄りの冷や水という言葉がある。
歳がらにもなく無理をして体を痛めたりすること。「それ、みたことか」と笑われるおちがついた慣用句である。
水たまりやらぬかるみがあれば、若い頃ならば一気に跳んでみせたり、あるいは少々足を取られても突っ切ってゆくことも怖れなかったが、さすがに今はもう無理だ。
降参、降参とばかり回り道をゆくか、引き返すか。
そんな分別というか、弁えというものをいつの間にか身につけて、これを悲しむか、諾うか。
だんだん心も老いに添うてきたように思うこのごろである。