暑い秋

県庁に鹿の宿れる白雨かな

ニュースで見た映像。

いつもながら交通の多い登大路を堂々と渡る奈良の鹿だが、観光客とともに県庁前の屋根付きバス停におとなしく夕立をやり過ごす姿に思わず笑ってしまった。鹿も豪雨は嫌いのようである。
今年はやたらに夏が長く、木陰や小さな流れに固まって涼を求めたり、人と違って自然物、人工物それぞれをうまく工夫して乗りきらなければならず鹿にとっても受難の年。
暑さ寒さも彼岸までとは言うが、ほんとうに彼岸で終わってくれるのだろうか。

まともな夕立

二車線をともに突つ込む白雨かな

高度510メートルの標識がある。

気温計は盆地より六度くらい下がってきた。
これだけの気温差があるのはもちろん高度差だけではない。
高度が100メートル上がれば0.6度下がるという算式に従えばせいぜい2、3度の差でしかないからだ。
理由は夕立。おりしも黒雲が前方から盆地にかけて広がっているなと思った途端バラバラと大粒の雨が窓を叩く。たたでさえ事故の多いことで知られる峠の下り道だけに、各車一様に速度を落とし慎重な運転に変わる。
何とか無事に盆地にたどり着いたが、ここも珍しく気温が下がっていた。夕立のあとの涼しさというのもなかなか感じられないでいたが、ようやくまともな夕立に出会えたような気がする。

着々

朝打ちし生コンたたく白雨かな

最近は骨材に砂利を入れてないみたいだ。

代わりに人工的なものを混ぜているのだろう。でなければ、高さ10メートルもあろうかというノズルに生コンを送り出すことは不可能だからである。
それに乾くのも早い。生コンの成分も昔に比べればずいぶん変わったのだろう。
隣地は着々と新築工事が進んでいる。
今日は久しぶりに夕立らしい夕立がきた。大きな雨音に浅い昼寝を破られた。夕立の後はすっと涼しくなったような気がする。

しがみつく

ハンドルに半身せりだす白雨かな

来る、来ると思わせる雷と風。

一陣の疾風がきたかと思ったら、大粒がバラバラと落ちてきた。
時間雨量にすると50ミリクラスの雨が、窓を戸を道路を叩く。
おばさんが、軽自動車のハンドルに身を乗り出すように、しがみつくように前を凝視しながら、急ぐように坂を登っていった。
ものすごい雨は10分ほど、今は思いついたように遠くで雷が鳴っている。典型的な夕立である。

行くか停まるか

しぶきあげ自転車白雨を走りけり

今朝のトレーニングは午後から雨との予報で油断していた。
久しぶりに上りは快調なペースで戻り道もご機嫌だったのに、ぽつぽつときたなと思うまもなく本降りになってしまった。
見渡しても雨宿りできそうなところもなさそうで、ここはタイヤからしぶきを舞い上げたまま突っ込むしかなかった。愛車よ、許せ。