別院にすすめばゆかし酔芙蓉
芙蓉は中国では蓮のことを指すらしい。
美しさでは蓮にひけをとらないことから「木芙蓉」と呼ばれたとか。
これは漢語に詳しい昭和蝉丸さん(敬称が抜けておりました。失礼しました。)にただしていただかればならないが、芙蓉の中でも酔芙蓉とはなかなか妖艶な語感を伴うものである。朝には白く咲いていたが昼頃には目にもはっきりわかるほど淡い紅をさし夕方にピークを迎える。翌日にはもう花も閉じてすぼまるように眠りいっている。
芙蓉の寺として京の妙蓮寺が有名だが、当地では橘寺が知られている。決して広い境内ではないが、奥の院まですすむと前住職が植えたという見上げるようみごとな酔芙蓉を見ることができる。
橘寺は聖徳太子生誕の地といわれ、飛鳥と斑鳩を往復したという黒駒の像がおかれたりしてよすがをしのぶことができるが、名前の通りここには大きな橘の木が植えられている。寺の名前の由来は、田道間守(たじまもり)が垂仁天皇に命じられて常世の国の不老長寿の実を持ち帰った橘を植えたことにある。
生臭い歴史の多い飛鳥のなかではひとり超然として異色の存在の輝きを放っている。