衛星の目にて眺める野分かな
朝早い時分はたしかに風が強かった。
ときおり突風など吹くとドアも開けられないほどだったが、台風の眼が近づくにつれ雨もやさしく風もおとなしくなった。当初家の真上を過ぎる予想よりはずっと西に寄ったので、台風の右半分のほうが風雨が強いと言われるので相当の覚悟をしたが拍子抜けである。
たしかにこの盆地は南の山と西の山に守られている。人工衛星の雨雲の写真を凝視しているのだが、ずっとエアポケット状態のままである。畝間が水浸しになるほど雨が欲しいと願ったのに肩すかしとは落胆である。だが、稲の花が咲くのも間近というこの時期の農家さんにとっては胸をなで下ろしておられることだろう。
昔から台風の動きとは下から仰ぎ見るものであったはずだが、いつの間にか衛星の高さからその行方を追いかけるという奇妙な昨今である。