逸れる

衛星の目にて眺める野分かな

朝早い時分はたしかに風が強かった。

ときおり突風など吹くとドアも開けられないほどだったが、台風の眼が近づくにつれ雨もやさしく風もおとなしくなった。当初家の真上を過ぎる予想よりはずっと西に寄ったので、台風の右半分のほうが風雨が強いと言われるので相当の覚悟をしたが拍子抜けである。
たしかにこの盆地は南の山と西の山に守られている。人工衛星の雨雲の写真を凝視しているのだが、ずっとエアポケット状態のままである。畝間が水浸しになるほど雨が欲しいと願ったのに肩すかしとは落胆である。だが、稲の花が咲くのも間近というこの時期の農家さんにとっては胸をなで下ろしておられることだろう。
昔から台風の動きとは下から仰ぎ見るものであったはずだが、いつの間にか衛星の高さからその行方を追いかけるという奇妙な昨今である。

余念

しななだるものみな高し野分あと

当地は思った以上に台風の影響が少なかった。

九州を中心とした西日本に長くとどまっている間に勢力がそがれたと考えてよかろう。その分、九州など西日本方面に死者が出るなど大きな爪痕を残す結果となったようである。
まる二日家でおとなしくしていたわけだが、結局雨が降ったのは昨夜すっかり寝込んでいる間だけのこと。覚悟していたわりには風もたいした被害が出ることなく、しかも今朝の涼しさときたらこの暑かった二ヶ月の秋をいっきに取り戻した感さえある。
畑では二メートルを越すまで成長したオクラが傾いている。風でゆさぶられて根本がぐらつくのでロープで支えを作った。まだしばらく収穫が見込めるからであるが、まわりでは秋冬野菜を着々と植え付けるのに余念がないようである。

慣らされる

古簾退けて別景野分前

目隠しを兼ねたすだれを巻いた。

台風の進路が思わぬ方向に変わって近畿直撃との報に、風にまくれないように備えたのだ。
すっかり巻き上げると見慣れた庭がいつもとは別の顔を見せた。これはこれでいいものだが、慣らされるということは恐ろしいもので、やはりどことなく落ち着かない。
台風があっけなく去ってまたいつもの景に戻そうかと思う。
晴れてきて午後の畑を巡回したら、密に蒔いた大根の双葉が押し合いへし合い首を伸ばしている。軽く間引きしておくことに。間引き菜が楽しめるのはこれからだ。

自然に聞く

猫の耳せはしく動く野分かな

暑いので窓を開けていたら、だんだん風が強くなってきた。

台風10号の暴風雨圏が間もなく去ろうとする段階でまさかの展開である。
こういうこともあるということを再認識したしだいだが、やはり自然のことは自然に聞くしかないということであろう。

目鼻立ち

濃き虹を置土産なる野分かな

遠い台風の尻尾が当地に伸びてゲリラ豪雨並みの雨をもたらした。

来たついでにせめて30分くらい降って乾ききった大地を湿らせてくれよと願ったところ、二度ほど来ては降らせて過ぎたがそのあと特別涼しくなったわけじゃない。ここのところ日課となっている夕方の散水が免れたのは助かったが。
さらにもうひとつ。ほんの短い時間だったが目の前に目鼻立ちのくっきりとした虹が立ったのだ。
あの方向はまだ降っているわけで今夜は気が抜けないらしいけど、ふだん家に閉じこもりがちな生活にちょっとした彩りを添えてくれた虹に感謝。

勝ち点

野分なか闘球場の昼灯す

昨日は近鉄東花園駅が臨時停車するなどして分かるのだが、花園ラグビー場でW杯の試合があったようだ。

おりから台風が近づいているということもあって、空模様が怪しい。夕方の試合なのでちょうど雨が降る予想時間帯となっており、昼間から競技場のライトが点いているのが電車からも見える。
今日の新聞ではフィジーとジョージアの試合だったようだが、各ブロック予選も半ばとなって、これからは勝ち点をめぐる熱い闘いとなりそうでいよいよ面白くなってきた。
日本対サモアは明日の予定。ここでしっかり勝ち点4、できるなら5を稼いでほしいところ。しっかりテレビで観戦するとしよう。

やっと普通の夏日

ハリケーンの国より電話野分なか

拍子抜け、肩すかしとはこのことか。

やっと夕方になって雨が来たが、普通の雨と何も変わらない。風も吹かない。
これが盆地の天気だ。
険しい風雨は中央構造線を越えては盆地に来ないのだ。
だから、水不足には昔から悩まされてきたし、たまにちょっと降っては元来湿地帯であった盆地は洪水に悩まされてきた。
気温が30度切ったのは今日の救いである。