ほどほど

颱風の進路に期する土煙

盆地の中央部には南から北へ雨がよく通るようである。

一方で、北に生駒山地、東に法隆寺裏から続く矢田丘陵にはさまれ、南に大和川を接する三角地にあたる当町は雨雲のエアポケットであるらしい。県下に夕立の予報が出ていてもまず降らないとみていい。
これは、生駒山地と金剛山地の狭間を流れ大阪へぬける大和川がまるで鞴のような格好となり雨雲は吹きぬけてしまうのである。
だから当町の地理的な形はいわば風が渦を巻くように停滞するエリアなのである。
毎日のように奈良市内では激しい夕立や台風による雨が降るが、当町にはお呼びがかからない。
田はさいわいに山の水を溜めた貯水池があるので、特段の旱でもないかぎり困ることはないようである。
ニュースでは米どころ南魚沼では川の水を水源としている地域では、川の水流が細りあと二三日雨が来ないと稲は枯れてしまうという厳しい現実を見せられた。
温暖化現象というのは触れば土砂降り、降るところには降るが降らないところには降らない。ほどほどの水量というのは難しいようである。

持て余す

颱風の数字にかくも一憂し

おぞましい数字が並ぶ。

気圧、雨量も、風速も、気象庁は「過去に経験がないほど危険な」とまでいうほどの猛台風であることを警告している。
ただ、歩みが遅いのかどうか当地への深刻な影響はまだ感じられない、というか台風が接近していることすら現実感はない。
ただ、重い空にもかかわらず気温は高い、体感では34、5度くらいありそうである。
台風対策は昨日のうちに終わっているし、台風で今日はやることもなく暇を持て余している。

人の星

あれこれの雑多くくりて颱風待つ

数字を聞くととてつもなく恐ろしい颱風のようである。

進路の東になりそうな当地は、南からの風をもろに受けて庭のあれこれ放置しているものがひどいことになりそうで対策をした。飛んでも問題ないものばかりだが、飛ばされたら迷惑をかけたり、何かを痛めることになるのでやることだけはしておこうと。
育苗中の苗を畑に移しネットなどで保護するとともに、まだ畑の支柱にしがみついているものをはがしたり補強したり。
やるだけのことはやったので、それでも防げなかったらそれはそれで仕方がない。
雨はともかく風対策は毎年やっているようで、しかも年々厳しくなってくるようである。五十年後百年後はたして人が棲める星でいられるのだろうか。

無事に

颱風を追ひ打つごとく夕茜

不気味な雲が西へ飛んでゆく。

あきらかに台風は去ろうとしているのは分かるが、その黒雲がこれまた不気味にも夕焼けているのだ。
ただそれは尋常の色ではなく、橙がかった色が雲といわず空全般に広がっているのだ。
なにやら不吉を思わせるゆうやけで、これから上陸するという静岡、関東の無事を願うのみである。

伊勢の神風

颱風の目とは闇夜に窓をたたくもの

夜中、まだ三時前頃だったか。

風雨が激しく窓を叩く音に目が覚めた。
寝床に入る頃には何の兆しもなかったのに、伊勢に上陸したものがあっというまに当地に達したのであろう。朝のニュースで頭の上を颱風が抜けていったことを知ったが、まさしく三時頃が台風の目が通過していたに違いない。
スマホの警報がけたたましく鳴って非常事態を知らせてくれるのはありがたいが、窓の音を聞きながらも眠りの底にふたたび落ちようとしているのを邪魔されてまた目が冴えてしまった。
伊勢の神風などどしゃれておれない、過去の常識を超える災害もあったようである。
ゆめゆめ、これからも予断はなるまい。

長寿台風

飛び込みし虫を殺さず颱風来

何かの拍子に蜘蛛が入ってきたようである。

いつもなら外へ退散いただくべく捕まえるのだが、こちらも颱風を避けて窓という窓を全部閉じているので、そのままにしておいた。朝起きてみると、どこにも見あたらないので、一夜限りの避難所であったようだ。
この5号というのは、今夕のニュースではまだ新潟沖で、温低にもならず台風のままとはしぶといやつだ。