風向一変

病害の山赤茶けて秋暑し

なんだか9月末頃まで毎日こぼしそうである。

「暑い」。
今日も体感温度は36度。西日のハンドルを握っていると頭がぼーっとしてくる。
奈良盆地はなにもかも焼けるようで、とりわけ周りの山がすごいことになっている。
「楢枯れ」現象で、あの三輪山ですら点々と赤茶けて被害が広がっていることが分かる。
最もひどいのは、法隆寺裏を走る松尾山から矢田丘陵にかけての山で、遠目にもはっきりと分かる広さまでやられている。去年から一段と猛威をふるっているようだが、その勢いは止められないのだろうか。このまま進めば盆地の景色が変わってしまうのではないかと心配だ。

憎めない暑さ

目玉焼の口を濯げば虫の朝

幽かだけど聞こえてくる。

コオロギだと思うが、朝や夜のふとしたときに秋の気配がある。
たとえば、使う前には気にも留めなかったが、電動歯刷毛のモーターを切ったら、急に虫の鳴き声が聞こえてきたりする。
熱帯夜の寝汗が顔の脂とまじって電気剃刀を使うことさえすこぶる不快な気分にさせられるが、こうしたささいな音によってそうした煩わしさから一瞬の自由が得られ、束の間の涼しさに包まれる。

外は相変わらず35度を超えるが、空の青さにはどこか澄んだところもあって、どこか憎めない秋の暑さである。

罔象女神

みよしのの岩まで碧く水澄める
水神にすは雷神の来意かな

盆地と違って東吉野は涼しかった。

なにより、高見川に代表される川のそばの爽やかさには救われた。
とくに、今回初めて丹生川上神社(中社)まで足を伸ばしたことは大成功だった。
この神社は古代の離宮跡に創建されていて、近くには雄略天皇にまつわる伝説の名をもつ集落もあって、大変古い歴史をもつことに驚く。
祭神は「罔象女神(みづはのめのかみ)」で、いわゆる水神である。天武のときに社として起こしたのが始まりで水を扱う業者、電力会社、製氷会社、氷菓会社などの信徳が篤い。宮のすぐ前を水量豊富な丹生川が流れており、いかにも神域にふさわしい場所である。「丹生」とは水銀が産する場所を示すが、上社、下社もあって果たしてここがそうだったのかどうか、白州正子あるいは司馬遼太郎の著作でも読めば分かるかもしれない。

二句目は作ったような句だが、実際に神社を散策していると雷さまがとどろき、いまにも雨が降ってくるのではないかと思わせる雲行きになってきたのを詠んでみたもの。さいわい数回谷に響いただけでどこかへ行ってくれたのだが。

願い下げ

秋暑く医院の駐車場せまし

今日は温度計に現れぬ残暑だ。

湿度こそ70%に届かないものの、朝から室内温度が30度を越えるようでは、少し体を動かしただけで汗がしたたる。
週間予報でも35度前後の日が続くと言うから、もうこれは関東に住んでいた時とはまるで違う気候だと言っていい。
西日本は残暑、東、北日本は日照不足というから、温暖化とは、なるほど、天候というものが極端に走るということらしい。
ということは、冬には極端な寒さがあるかもしれないということだが、どれもこれも願い下げにしたいものだ。

旧暦未だ水無月

流星の眼窩に沈む一雫

天川村では、さぞや此処らは星がきれいだろうなと思った。

天河神社にきて、「天の河七夕まつり」という幟を見たら、ますますその感が強くなる。
山に仕切られた空には天の川が流れ、それを仰いでいるわずかな時間にも流れ星がいくつも見えるのではないか。
この数日、幾分秋めいてきた兆しもあり、さらに空気が乾いてくれば空の高さも感じられるだろうか。

本日室内31度(外気はおそらく34度?)、湿度60%。この28日が旧暦7月7日になるそうだが、はたして星祭できる条件が整うだろうか。

無制限

ごろごろと湧く水汲んで涼新た

三日連続でごろごろ水関連。

たしかに美味しい。

二日間ですでに10リットル飲んだ。
家人は紅茶党でコーヒーはあまり飲まないが、この水で沸かしたコーヒーは甘くて柔らかくて飲みやすいと気に入ったようである。
家にあるボトル総動員して80リットル汲んできたが、汲み置き用のボトルを増やしておけばよかった。何故なら、時間無制限の汲み放題という仕組みだからである。
以前は、タイマーが切れるたびに100円硬貨を放り込む仕組みだったのが、3年ほど前から駐車料金という名目の500円払えば、駐車ロット別の蛇口を好きなだけ占領できる。
隣のロットには軽トラ荷台いっぱいにタンクを並べ、持参したホースで効率的に汲んでいる御仁も。終わると、当然のように後ろに大きく傾いたかたちで、のろのろと出て行った。

山の土産

飛ぶやうに売れて深山の新豆腐

水のうまいところにはうまい酒とうまい豆腐がある。

洞川の場合は、酒こそないが、そのうまい水自体が「名水ごろごろ水」として売られ土産にもなっている。
名水、豆腐、陀羅尼助の三大土産が洞川の代名詞とも。
豆腐は午前中の早いうちに売り切れたようで、持ち帰ることはかなわなかった。