傷つきし柚子のえくぼを愛しけり
柚子の香をあばたもともに愛しけり
棘とあばたとそれも愛してゆず香かな
まだ棘が残っていた。
枝がまだ若くて伸び盛りの頃、棘もまた成長中のものは柔らかいので見つけては伐っていたのであるが。
今日あたり、色もすっかり整っていい時分だからと手を伸ばすと、その固く成熟した棘の残党にうっかり触れてしまったのだ。
而して、痛みの代償としていくばくかの果実を得たのであるが、今年は数が少ない分一個の大きさも形も花柚子としては上出来のようである。
皮が痛んだものは風呂、殘りはジャムになるだろう。
柚子湯は冬,柚子単独では秋の季語だが、色形ともに美しいのは今ごろである。
林檎、洋梨、そして珍しい冬の梨と、各地からの到来ものに囲まれてデザートのゆたかな今こそわが家の最高の秋なのである。