とりこ

蜘蛛の囲の一輪封じゐたりけり

小山梔子の生け垣が見事である。

よく刈り込まれているが、よく見るとところどころ蜘蛛の巣が何重にも張られている。
なかに、虫ならぬ山梔子の花が一輪取り込まれているのもあった。
取り込まれてはいるが、あの香りには間違いがなかった。

染め分け

青鷺のにはか駆けだす濁田かな

剣豪武蔵の絵に似ている。

モズが枝にとまっている静寂のたたずまい。
絵のようにじっと動かぬまま佇んでいるときもあれば、餌を漁る忍び足、そして時折見せる駆け足。貪欲な食欲、なかなか旺盛である。ときには見に余るサイズを持て余して放置することもあるが。
この鳥の最も優雅なのは、やはり飛翔である。灰色、紺色に染め分けられた大きな翼が頭上を飛んでゆく姿を見送るのは感動的でさえある。

ほどよい距離

蒲の穂や遊水池の人寄せず

鴨やバンが育つ小さな池。

彼らは葦や蒲が茂る人工島に巣をかけているようだ。
金網で高く囲われているので、遠くから眺めるだけだが、生き物との関係としてはこれくらいの距離がほどよいのだろう。

滝雲

黒南風や暗峠雲の滝

生駒嶺の鞍部を雲が滑り降りてくる。

滝雲という現象だ。
今日のようなどんよりとした日によく見られる光景だ。
梅雨がもたらす低い雲が浪速から生駒嶺をせりだすように越えるのだ。
遠く若草山も、二上山の頭も雲にかすんでまったく見えない。

早々と灯を灯す夕べとなった。

クリーム色

一山に点景なして山法師

遠くに霞んだ綿菓子のようだ。

今、山法師の花が真っ盛り。
この花も梅雨を象徴する花の一つだ。
花に見えるのは、実際は、ハナミズキ同様花ではなくて「苞」の部分だが、秋には中心にある小さい花の集まりが大きな実となって目を楽しませてくれる。

第二日曜日は町内の朝の一斉清掃と自治会の打ち合わせ会議のある日。
梅雨のどんよりとした空に、ややクリーム色を帯びた白が集会場の入り口に目を引いた。

句は、矢田寺紫陽花に混じって一本の大きな山法師が印象に強い。

雨に叩かれて

二百段巷を隔て沙羅の花

この時期、梅仕事も忙しいが、花だって忙しい。

紫陽花は雨を欲し、沙羅の花は今日を咲き急ぐ。
沙羅樹の足元には雨に散った花が落ちているが、花を踏んでまでそばに近づこうという気はおきない。
椿も同様だが、落ちたものとて落ちたものの命が宿っているようにも思えてくる。まして、たった一日きりの花となれば余計そういう思いは深いのかもしれない。

奈良盆地をみわたす伽藍の、一僧房の庭に立派な沙羅樹があり、塀越しにも一輪一輪がはっきり見える。
沙羅樹は沙羅双樹とは似て非なる別品種だと聞くが、寺院の一画におくと実によく似合うように思えるのだがどうだろうか。

梅3キロ収穫

九ちゃんの口笛涼しカーラヂヲ

口笛も草笛も久しく鳴らしたことがない。

今日車に乗ってると、何気なく聞いていたラヂヲから九ちゃんの「上を向いて歩こう」が流れた。
あんな高音の口笛がよく出るものだと感心したが、もしかして口笛というのは自分の音域というものにもリンクしているのではないかと思った。
どうやっても高いところの口笛が吹けないし、その高いキーの部分はやはり歌うこともできないのだ。

梅はまだ大丈夫かと油断していたら、今朝いっぱい落ちていた。
きゅうきょ今朝は梅のもぎ採りと、込みいった枝の剪定を行った。
梅は大きからず小さからず、3キロほど採れた。
もう少し熟れさせて、梅干し作りに挑戦だ。