室内13度

唐辛子塗りたくられておでん種

おでんの出汁の匂いが部屋に立ちこめてきた。

室内温度は外より10度ほど高い13度と今冬一番の寒さにうかうか昼寝もしてられない。
そこへ熱いおでんだからこれはおおいに助かる。
おでんだけでも十分体が暖まるものだが、今日は自然といつもよりも使う唐辛子が多い。
食べたあと体がかあーっと熱くなってきたのは当然である。

出汁済々

翌る日は麺のおつゆのおでんかな

昨日の夕食はおでんだった、

そうなると決まって今日の昼飯はうどんまたは蕎麦になる。
おでんの出汁のほかに、練り物、野菜、昆布など様々なうまみが溶けこんだおつゆが最高なのである。
而して、きょうはいただいた蕎麦である。
今日のように一日曇りがちで、家にいても寒い日はあったかいものにかぎる。

在庫

金婚のおでんと決まる阿吽かな

「夕飯何がいい」と問われて「おでん」と応ふ。

こういうときたいていは好物のコロッケ、家人得意のハンバーグ、面倒くさそうだなという雰囲気の時はカレー。たまに茶粥ということもあるのだが、最近は秋刀魚のいい丸干しが手に入らないので機会が少なくなった。
今年すでに何度かおでんとなっているのだが、これは菜園をやるようになって大根をいただくことが多くその消化という意味合いも強い。今日は冷たい雨におそらく戸外は10度に達しないくらい寒く、家の中も暗いので温かいものがいいと思って所望した。
掲句のように何も言わずにすっと出てくるような夫婦では決してないが、年が明ければ正真正銘の金婚を迎えるということもあって理想を詠んだだけのことである。
ともあれ練り物の買い置きもあったようですんなり決まったということである。

適量

譲りあふねたの卵のおでん鍋

今晩のメニューはおでん。

数えてみると今年はこれで二回目。いつ食っても我が家のおでん出汁はうまい。
具材はだいたい偶数で構成されてるが、大根、椎茸、人参などの野菜物はそうとは決まっていない。
はんぺんとか、揚げ物なども偶数、奇数とも決まらない。
一日に何個も食べないと決めている卵だけは必ず二個、人数分である。
腹にだいぶ詰まってくる時分となるとあまってきた具を譲り合う。だいたいは僕がいただくことになるが、あまり無理して食わないようにもしている。適当な量を残せば明日のうどんの具に使えるからだ。二日目のおでん出汁でつくるうどんは、それは美味い。だから適量残すように食うことにしているのだ。

出汁とネタと

西のおでん戸惑ふ東国戎かな

最近はおでんというのはコンビニで買うものらしい。

スーパーでもおでんのネタセットが売られているが、なにより手軽さが受けて若い人に人気なのであろう。
本当は鍋で炊いて、いろいろなネタの味がしみ出た、その出汁ごといただく方がうまいと思うのだが。
そのおでんにも当然地域色があって、ところ違えば具もまた違う。
長年関東で過ごした人間にとって、ちょっと見馴れないネタがおでん鍋に詰まってるのを見ると、手を出すにも少しばかり勇気がいる。

今夜は急に冷えてきた。これから数日間さらに冷え込む日が続くという。
おでん恋しいシーズンがやってきた。

遠火事

炊き出し用深鍋に焚くおでんかな
遠火事の容易ならざる煙かな

今日は自治会の防災訓練。

消防署から広報スタッフも参加して、消化器の使い方、消火栓とホースの扱いなど、実演交えての講習会の折も折、緊急無線が入りスタッフに緊張が走った。見ると遠くに黒煙が上がり真上に伸びているのがはっきりと分かる。ものすごい煙りにこれは工場などの火事に違いないと思ったが、果たして工場倉庫が燃えているとのことだった。防災無線から各基地に出動命令が出されているときには、参加者にも緊張感が伝わってさらに訓練に真剣味が加わったようでもあった。
30分ほどで煙は見えなくなったので鎮火に向かっているようで、訓練が終わるとみんな安心したように、恒例の炊き出しのおでんの熱々をふうふういいながらいただくのであった。
自治会の活動は年内にもうひとつ。夜回り、餅つき、役員による忘年会が年の瀬押し詰まってから。年が明けると来年度総会、役員推薦など一年の締めくくりの活動が待っている。
昔取った杵柄で自治会館の防火管理者となっていることもあり、来年度も役員からは逃れられないとは思うが。

昭和の光景

変わり種置かぬおでんの店古び
お絞りを待たず指しゐるおでんかな
おでん屋のはや満席に予約客
急階段這うておでんの座敷かな
酒おでん矢継ぎ早なる二階客
おでん屋の二階貸切り大女子会
女子会の流れはおでん屋台にて
おでん屋の切り盛り独りガード下
席ひとつ詰めてもらいしおでん酒
ハンガーも無きおでん屋の小さき椅子

今月の兼題のひとつ「おでん」。

地方や店によってネタに特徴があったり、出汁が微妙に違ったり。
店に入った途端眼鏡が曇るほど湯気がこもっていたり、狭くて汚くて、でも味が忘れられず通う常連、どっときた予約客、同級生だったり女子会だったり、いっぺんに賑やかに。
狭くて急な階段のうえからビールだのお銚子だの注文も殺到しておやじは大忙し。
ぬいだコートの置き場所すらなくて椅子の背もたれに掛けたり、コートのままでいっぱいやったり。

イメージに出てくるおでん屋の光景はいつまでも昭和のままだ。
こんな店がまだあるなら喜んで行く。