欠伸して猫のおくびの冬日かな
三月の気温だという。
バイクに乗っても寒くはない。
風もないし、少し動けば汗がでる暖かさにつられていつもなら行かない所に踏み込んでいる。
厚く落葉が積もって枝越しの光がそそぎ、そこはいかにも暖かそうである。
野良猫が大きな欠伸をみせて逃げる気配もない。まことに長閑な一日であった。
めざせ5000句。1年365句として15年。。。
欠伸して猫のおくびの冬日かな
三月の気温だという。
バイクに乗っても寒くはない。
風もないし、少し動けば汗がでる暖かさにつられていつもなら行かない所に踏み込んでいる。
厚く落葉が積もって枝越しの光がそそぎ、そこはいかにも暖かそうである。
野良猫が大きな欠伸をみせて逃げる気配もない。まことに長閑な一日であった。
学舎の時計にそそぐ冬日かな
一斉下校の時間だった。
校舎の壁に掲げられた時計を見るとちょうど三時である。
ボランティア(?)に誘導された長い列が三叉路で大きく別れ、上へ登る列と下へ下る列になった。
三日続きの小春日で下校の子供たちの表情もこころなしか柔らかい。
こちらは間引きの大根を下げて家路を急ぐところである。
竹林を抜いて冬日の閑かなる
竹林からもれてくる日差しがまぶしい。
いつもなら鵯の声が大きく増幅されるほど賑やかなのだが、今日は深閑としている。
もれてくる冬日さえ竹林に音を吸収されたかのように閑かな気がするのである。
峠にて冬日を返すもののあり
伊賀方面から奈良盆地に一気に駆け下る峠がある。
Ωの形をしているところからΩ(オメガ)カーブ、魔の下り坂として知られる峠だ。
この峠は名阪国道として奈良や大阪と伊賀、伊勢、名古屋を結ぶ重要な道だが、盆地の西側の山の中腹に作られているので盆地のどこからでもその位置がはっきり分かる。
大型のトラックなどが通ると、一瞬パネルに当たった光りを返しながら降りていくのがよく見える。逆に上り車線は山側を通るので車の往来は見えないのであるが。
立ち枯れて下葉にゆづる冬日かな
大きな木が枯れて若い木々に日が差している。
目の前の漆の若木の紅葉葉がハイライトされて、日に透ける緋色が美しい。
これが小春と言わんばかりの日和である。しばらくその美しさに見とれていた。
御造替なつて本朱の冬日かな
丹塗りの句は先に詠んだが、再チャレンジ。
本朱とは硫黄と水銀の化合物からなり、時間の推移とともに渋味のある色に変化するので「神さび」の趣を強くするとされるが、本朱だけを使うのは春日の本殿だけという。一般には、鉛入りの鉛丹や酸化鉄を含むベンガラなどの顔料が使われるのが一般的である。
水銀の使用は世界的に見ても厳しい制限があり、過去60回休みなく続けられてきた式年造替のためとはいえ、塗料を確保するのはより厳しいものがあろうが、何とか伝統を守継いでもらいたいものである。
白鷺城の白漆喰同様、まっさらな白や赤を目にすることとができる時間は限られている。今のうちに目に焼き付けておきたい。
友の著を書架に見いだす冬日かな
図書館で同級生の著作を発見した。
古事記研究で知られる三浦祐之君の本だ。以前から出雲伝説と史実との関係に関心があるものだから、関係する部分をしばらく閲覧コーナーで読んでいたが面白さにひきずられて、気がついたときは日が傾き始める頃になっていたので、貸し出ししてもらうことにした。